出版社内容情報
日本の確率論の創始者による初のエッセイ集
日本の確率論研究の基礎を築き、多くの俊秀を育て、ガウス賞第一回受賞のほか数々の栄誉の輝いた伊藤清。本書は「確率解析」誕生の経緯や「忘れられない言葉」など数学や数学に携わる人々への深い思いを綴った初のエッセイ集。
Ⅰ.忘れられない言葉
Ⅱ.言葉と数
Ⅲ.数学の楽しみ
Ⅳ.数学とは何か
Ⅴ.確率論と歩んだ60年
Ⅵ.想い出
内容説明
日本の確率論研究の基礎を築き、かつ多くの俊秀を育てた伊藤清。また数学界最高の栄誉の一つであるガウス賞の第一回受賞のほか、京都賞、ウルフ賞、藤原賞などを受賞した。本書は、氏の初のエッセイ集である。数学者になった経緯や伊藤の公式で名高い『確率解析』誕生の秘話、数学教育への提言、さらには『忘れられない言葉』『思い出』など、数学に携わる人々への深い共感を綴った。
目次
1 忘れられない言葉
2 数学の二つの柱
3 数学の楽しみ
4 確率論とは何だろうか
5 確率論と歩いた六十年
6 思い出
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
66
相対性理論や量子論など物理学が人類の知を牽引していく時代にあって、数学者は専ら論理体系の構築に努めていたらしい。著者は数学の中でも体系化が最も遅れていた確率論の分野を開拓していった人。穏やかな筆致で現代数学の美しさを語りながら、同時に抽象性を超えていく価値をも説いている。昔のニュートン、オイラー、ガウスらのように、実在への興味や直感を大切にすることは、数学の真の美しさを損ないはしないだろう。数学は結局のところ集合論だ(カントルはそれを意図しなかったけれど)など、素人にもわかりやすく興味の持てる内容だった。2017/07/28
猫丸
13
早い時期に確率論における革命的仕事を成した伊藤先生の回顧談。旧制の中学高校は文理を問わず基礎教養を徹底したから数学者の書く文章にも格調があった。高木貞治先生の「解析概論」などは語り口調に身を任すだけでも心地よい。本書ではp.114〜p.123が白眉か。さて、伊藤先生が確率微分方程式を創始してから50年後、大学の秀才たちが研究室に残らず皆ウォール街へ飛び出していくようになる。数学を兵器とする経済戦士の登場である。しかし、高度に抽象的な金融派生商品の取り引きに対し伊藤先生は反対の意を示した。2020/11/23
アドソ
9
高名な数学者の秀逸なエッセイ。専門的な内容もちらほらでてきて、その辺はすっ飛ばしたとしても、著者の数学にかけた情熱(?情熱というほど熱くはない。人生そのものが数学だったという感じ)が伝わる。数学だけでなく科学一般、もしかしたら仕事一般、生活一般にまで拡張できる普遍的な哲学が述べられているような気がした。2010年刊だがすでに入手困難な様子。図書館本だが、手放すのが惜しい。岩波で文庫化して欲しい。2016/12/28
shin
3
数学とは、抽象世界の理論と現実問題からのインスピレーション/への応用の両面を持つべしという言葉は、数学と他の科学との橋渡しとなるような言葉で心に響くものがあった。2019/08/04
suko
3
確率微分方程式を生み出し、確率積分をするうえで重要な伊藤の公式を作った伊藤清のエッセイや演説等をまとめた本。湯川秀樹の書かれた本を読んだときにも思ったことだが、その分野に対する強い情熱が感じられ、自分ももっと勉強したいと思わせてくれる本。応用数学は純粋数学の根となり芽となる部分を含む、ということや、数学教育の話題など示唆にも富んだ本なので、直接確率を専門としていなくても学ぶことが多い本だと思われる。個人的には確率過程の勉強を本格的にしてみたいという気持ちになった。2015/07/26
-
- 洋書
- MAGIES
-
- 電子書籍
- 落第忍者乱太郎(29) あさひコミックス