出版社内容情報
文化とは何か,それが人間社会に果たす役割は何か.宗教・芸術からイデオロギー,政治に至るまで,さまざまな文化現象の背後に一貫する意味の体系を探り,文化が象徴として機能するシステムを解明する.
内容説明
文化とは何か、それが人間社会に果たす役割は何か。ジャワやバリの人類学的調査で世界的に高名なギアーツが、哲学・言語学・精神分析学などの各学問領域で作られた文化の理論を超える、より包括的な理論の構築を試みる。その卓越した理論は、宗教・芸術からイデオロギーや政治に至るまで、様々な文化現象の背後に一貫する意味の体系を探り、文化が象徴として機能するシステムを解明する。アメリカ社会学会からソローキン賞を与えられた古典的名著。
目次
第1章 厚い記述―文化の解釈学的理論をめざして
第2章 文化の概念の人間の概念への影響
第3章 文化の発達と精神の進化
第4章 文化体系としての宗教
第5章 エトス、世界観、聖なる象徴の分析
第6章 儀礼と社会変化―ジャワの一事例
第7章 現代のバリにおける「内面的改宗」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
6
戦後情報理論、サイバネティクス、分析哲学を導入して文化をシステムとして捉える著者は本書で、自らの人類学的姿勢を集約した論を展開する。古来から存在する文化システムと現在動きつつある社会システムを区別する本巻では、宗教的要素が多く占める文化は、社会から見て無意識的であるとした。この状況を著者はM・ウェーバーの「意味の織物」(蜘蛛の巣)に捉えられたヒトとしてイメージし、目に見えない意味を見出そうとする人類学は、厳密な科学的記述でなくG・ライルのいう「厚い記述」(詳細な記述)によって象徴的に解釈する学と捉える。2024/04/08
スミレ雲
5
【図書館本】面白かった。また、読んでみたい。
の
2
文化が人間社会にもたらす影響について解説する。古来から文化体系は宗教が担っていたが、19世紀以降の啓蒙思想の広がりと、それによる民衆蜂起・革命による新たなイデオロギーの広がりが、古来の世界観を否定し一種の「改宗」をもたらしていると説く。しかし、文化構造(古代)と社会構造(近現代)の両方は並行してしまうので、極端なナショナリズムや原理主義が生まれてしまう。両者が独立している世界で生きることで初めて、社会的知的活動を可能にすることができるのではないだろうか。2011/09/11
抹茶ケーキ
0
個別のエスノグラフィーとかではなく、ギアーツの方法論に興味があったので、最初の「厚い記述」が一番面白く読めた。社会構造と主体性の両方を認めてるという点でバランスがとれてると思った。2016/07/28
☆☆☆☆☆☆☆
0
改めて。いや面白いっすね。二つの説明の極があったらどちらにも与せず、相互作用と解釈してとにかく中道を進むというのは、ポスト構造主義的な人類学的思考の原点と言えるような気がする。けっきょく解釈なんでしょとか、職人技でしょと叩かれるところも共通してますし。ギアツはいまも生きてるんだなぁ。2015/11/03