出版社内容情報
ドイツの保守革命家達は合理主義を拒絶しつつ近代テクノロジーを受け入れていた.この反動的モダニズムのパラドクスを右派知識人の思想において検証し,啓蒙的理性に拠らないドイツのモダニズムに迫る.
内容説明
ワイマール共和国から第三帝国にいたる時期、ドイツの保守革命家たちは合理主義を拒絶しつつ、近代テクノロジーを賛美していた。この反動的モダニズムがはらむパラドクスを、ユンガー、シュペングラー、ゾンバルト、シュミットなど右派知識人の思想がもつ文化的伝統において検証する。尊蒙的理性に拠らなかったドイツ特有のモダニズムとはいかなるものだったのか。
目次
第1章 反動的モダニズムのパラドクス
第2章 ワイマールにおける保守革命
第3章 オスヴァルト・シュペングラ―ブルジョワ的矛盾・反動的和解
第4章 エルンスト・ユンガーの魔術的現実主義
第5章 テクノロジーと3人の大立者の思想家
第6章 ヴェルナー・ゾンバルト―テクノロジーとユダヤ人問題
第7章 イデオローグとしてのエンジニア
第8章 第三帝国における反動的モダニズム
第9章 結論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
毒モナカジャンボ
2
『啓蒙の弁証法』の通り、ナチズムとは合理性と啓蒙主義の行き着く先だったのか?筆者は逆に、ドイツの啓蒙思想、自由主義が不十分だったことが思想としてのナチズムの台頭を招いたとする。ヴァイマル期の新しい右翼たちは、ドイツの伝統的な(しかしそれは”選択された伝統”なのだが)反合理主義とテクノロジーの両立という困難な命題に回答を与えた。テクノロジーにドイツ魂(血と大地)を注入する/されることで両者を止揚するというのだ。ゾンバルトが資本主義にユダヤ性を付与したことで、保守革命思想は反ユダヤ主義を胚胎することになる。2020/06/19
せみ
1
自分の主張の枠組みありきの論の運び方だが、各論で扱っている素材、特にドイツのエンジニアたちがアイヒマン的な「悪の陳腐さ」のうちにあるよりは、ドイツ的「文化」にテクノロジーやモダニズムを融合させて積極的にイデオロギーを展開しているという点が興味深かった。2014/01/30