出版社内容情報
関東大震災のさいの朝鮮人虐殺事件はよく知られているが,中国人虐殺は歴史のやみの中にほうむりさられてきた.9年がかりで生存者や遺族をさがしあて,貴重な証言や資料を入手,はじめてその真相を明らかにする.
目次
事件発覚の過程
戒厳令下の江東区
大島町事件とは何か
王希天の足どりを追う
王希天と僑日共済会
政府隠蔽を決める
検証の旅
なぜ?を問いつづけて
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
扉のこちら側
70
2016年1138冊め。朝鮮人虐殺は教科書でも知る話だが、自警団の暴動により起こったという印象が強く、「討伐対」を組織した軍部がここまで介入していたとは知らなかった。そして表題通り「中国人」への虐殺についてである。朝鮮人をあらかた殺しつくした後、「ついでに殺してしまえ」という流れ。9月1日の地震発生後、中国では日本支援のための募金活動が行われていたが、命からがら難民として上海にたどり着いた人によって大虐殺が明らかになったのが10月12日。日本政府がどう隠ぺいしていったか。2016/12/24
coolflat
22
中国人虐殺事件は朝鮮人虐殺事件と同様、その要因は戒厳令にあった。軍隊の暴走と民衆の狂気は相乗して大量の朝鮮人虐殺となった。狂気の夜が明けて、もう殺すべき「敵」がいなかった。血に飢えた軍隊の前に生贄にされたのが中国人労働者であった。民衆の狂気の原因は何か。流言を信じたからに他ならない。「敵」を示されれば単純に信じて竹槍を持って駆け出す人々は、普段は多分「いい人」達なのである。権力はこの「いい人」達を利用する。この「いい人」達は容易に権力の作為に踊る。「いい人」達が暴発すると、警官や軍人も手がつけられなくなる2020/09/01
Rieko Ito
1
関東大震災の際、朝鮮人だけではなく日本人も殺されたという映画が最近話題だが、これは中国人が殺害された事件についての、30年前に出版されたリーフレット。五百名を超える中国人が犠牲になっている。また、本書で中心的に扱っている王希天の殺害は、大杉栄の殺害に通じるものがある。背後には日本人底辺労働者と外国人(中国人)労働者の軋轢という問題も大きかったようだが、現在にもその構造は存在している。 2023/09/12
toshokan-no-hito
1
文章がちょっと雑なんですが概要をつかむにはよかった。2014/04/02
みなみ
0
関東大震災における朝鮮人虐殺の発端となったのは官憲の情報操作という記述があり、そこでまず衝撃を受ける(その説は見たことはある)。民間人が中国人をよってたかって殺していく様子は、本当にこれが起きたと思えないほど。生き残って中国に帰った人たちの証言が重い。そして、王希天の記念碑まで破壊した大日本帝国は本当に外道そのものだ…2018/09/14