出版社内容情報
日本仏教で重要視される用語・概念をインド・中国にさかのぼって精細に検証,受容と変遷の様態を明らかにすることによって翻訳文化としての仏教思想の核心を衝き,現代を考察・批判する方法としての有効性を論ずる.
内容説明
仏教思想は日本文化の中核をなしつつ、なおかつ他者として在るという二義性を持つ。この観点から著者は日本仏教で重視される用語や概念をインド・中国にさかのぼって精細に検証、受容と変遷の様態を明らかにすることによって翻訳文化としての仏教思想の核心を衝き、仏教が文化と社会を批判する原理となりうることを鋭く説く。
目次
序章 仏教翻訳文化論
第1章 因果応報
第2章 一乗
第3章 一念
第4章 自然
第5章 即非
第6章 即心是仏
第7章 仏性
結章 アジアの中の日本仏教
著者等紹介
末木文美士[スエキフミヒコ]
1949年山梨県甲府市生れ。1973年東京大学文学部卒業(印度哲学専修課程)。1978年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得。1995年東京大学大学院人文社会系研究科教授。現在、国際日本文化研究センター教授、東京大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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俊介
1
本書の狙いは、日本で受け入れられている仏教の言葉=概念が、インドに始まる仏教史の中では必ずしも普遍的なものではないことを明らかにすることだ。自然(じねん)、仏性、因果応報などが取り上げられる。これらはそもそも一度中国語に翻訳されなければならなかった。その際にいかに当時の仏典翻訳家たちが、忠実な翻訳を心がけるよう苦心しながらも、独自の解釈が入らざるを得なかったか。またそれらが日本に入ってきた時も、日本人独自の感性で解釈したはずだろう。仏教に関心持つものとしてはそういう視点を持つことは大切だなと感じた。2019/02/04