出版社内容情報
「アウシュヴィッツ」から70年の自死にいたるツェランの道程とは……「詩の終り」から始まる精密な言葉実験,特異な宇宙感覚,いずれも新たな解読を待つ現代の黙示録だ.同時代を生きた詩人が,自らの詩作の全重量をかけた対話.
内容説明
「アウシュヴィッツの後に、詩を書くことは野蛮だ。」この言葉と、生涯を賭して対話した詩人がいる。流浪と絶滅収容所と、民族の経験への悼みを潜ったその詩は、人類の未来に向けてたてられた黙示を刻む。限界まで言語を酷使する精密な実験、特異な宇宙感覚に発する形象の連鎖。20世紀精神史のもっとも深く掘られた坑道がここにある。思想の骨髄で編まれた言語宇宙を前にするとき、解続はそれ自体が精神の冒険だ。同時代を生きた詩人が、自らの詩作の命運をかけて対決を試みる。
目次
1 2人称への声(おまえを集め、立て、いたるところに―ユダヤ系文学;祈れ、主よ、わたしたちに向かって―闇の格子;たましいの明るさの花柱―ばらの変容)
2 非在のテクストへ(反世界のコスモゴニー―『非在の者のばら』;人間たちの彼方で―『息の転回』から『糸の太陽たち』へ;眼の系 脳の系を追って;一つの言葉 一つの闇―『雪の声部』と『光の強迫』)
感想・レビュー
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マウリツィウス
21
【パウル・ツェランと「子午線」】パウル・ツェランの記そうとした古代ユダヤ教詩篇は新約聖書分類において古典的位置を確立する文明論集を意味する。古代ギリシャ語において先駆的存在でもあった《キリスト教》以前の原点へ立返った意義と内容は詩的領域にて確かなものとされる。ツェラン以降の現代詩人を超え得る存在を予期否定するに十分な典拠を用いた詩作とは最善でもあり最高位詩文に刻まれるべきもの、古代ユダヤ教の残り火ではなく主YHWHを証明として掲げたツェランの選択肢はかつてない無限集合詩篇を形成していく。方法論理十分意義。2013/07/14