出版社内容情報
「サヨナラ、ダケガ人生ダ……」「山のあなたの空遠く……」「秋の日のオロンの……」。どこかで耳にしたことのあるこれらの懐かしい言葉は、いずれも井伏鱒二や上田敏による翻訳詩の一節。一度聞いたら忘れられず、心に沁み入るこのような翻訳詩はいかにして生みだされたのか。
【目次】
序1 明治・大正の名訳詩集(亀井俊介)
序2 記憶に残る名訳者たち(沓掛良彦)
I 明治・大正篇
ながらふべきか但し又/ながらふべきに非るか
シェイクスピア「ハムレット独白」(矢田部良吉訳)
いずれを君が恋人と/わきて知るすべやある
シェイクスピア「オフエリヤの歌」(森 外訳)
レモンの木は花さきくらき林の中に
ゲーテ「ミニヨンの歌」(森 外訳)
わがうへにしもあらなくに/などかくおつるなみだぞも
ゲーロク「花薔薇」(井上通泰訳)
美は精細の器に現はれ/生は短期の命に全し
ベン・ジョンソン「短命」(内村鑑三訳)
時は春/日は朝
ブラウニング「春の朝」(上田 敏訳)
秋の日の/オロンの
ヴェルレーヌ「落葉」(上田 敏訳)
山のあなたの空遠く
カール・ブッセ「山のあなた」(上田 敏訳)
なじかは知らねど心わびて
ハイネ「ロオレライ」(近藤朔風訳)
蛆虫よわれに問へ.猶も悩みのありやなしやと
ボードレール「死のよろこび」(永井荷風訳)
いのち短かし,恋せよ少女
アンデルセン「ゴンドラの唄」(吉井 勇訳)
脚にまかせ,心も軽く,私は大道を闊歩する
ホイットマン「大道の歌」(抜粋)(有島武郎訳)
月日は流れわたしは残る
アポリネール「ミラボオ橋」(堀口大学訳)
私の耳は貝のから
コクトー「耳」(堀口大学訳)
II 昭和・平成篇
惜しめただ君若き日を
杜秋娘「ただ若き日を惜め」(佐藤春夫訳)
あだなりと名にこそ立てれ
ヴィヨン「兜屋小町長恨歌」(矢野目源一訳)
われはひとり 夫なき後を存うる
ピザン「想夫憐」(矢野目源一訳)
明日は恋なきものに恋あれ
作者不詳「ヴィーナス祭の前晩」(西脇順三郎訳)
「サヨナラ」ダケガ人生ダ
于武陵「勧酒」(井伏鱒二訳)
行く人よ,ラケダイモンの国びとに
シモニデス「テルモピュライなるスパルタ人の墓銘に」(呉 茂一訳)
恋する身とはなるなかれ
魚玄機「秋夜」(那珂秀穂訳)
たをやかに陪蓮のきみは
ポー「陪蓮にる歌」(日夏耿之介訳)
酒と盃でこの世に楽土をひらこう
オマル・ハイヤーム『ルバイヤート』より(小川亮作訳)
吸ひ給へ,いざわが身より,芳しき花の想ひ出
ヴァルモール「サアディの薔薇」(齋藤磯雄訳)
玉の枕,紗のとばり/夜くだちの涼しさかよふ今宵かな
李清照「酔花陰」(日夏耿之介訳)
あわれ,はや/わが身も憩わん
ゲーテ「旅人の夜の歌(二)」(大山定一訳)
花や葉も草の木も/思ひ悩むわが心ゆゑ
読み人知らず『ケンブリッジ歌謡集』より(呉 茂一訳)
ぼだい樹のこかげ/あの草原は
ヴァルター「ぼだい樹の木かげ」(高津春久訳)
ほかの壷なら酒をいれる
リルケ「涙の壺」(富士川英郎訳)
されど女の,恋に酔ふ男に云ふは
カトゥルス「詩・七〇番」(中村真一郎訳)
訳者小伝
訳詩集略年譜
あとがき
【著者紹介】
亀井俊介(かめい・しゅんすけ)
1932年岐阜県生まれ。東京大学名誉教授、岐阜女子大学教授。アメリカ文学・比較文学専攻。『近代文学におけるホイットマンの運命』(1970)で日本学士院賞、『サーカスが来た!』(1976)で日本エッセイストクラブ賞、『アメリカン・ヒーローの系譜』(1993)で大佛次郎賞を受賞。著書は上記のほかに、『メリケンからアメリカへ 日米文化交渉史覚書』(1979)、『アメリカ文学史講義』全3巻(1997-2000)、『アメリカ文化と日本』(2000)、『わがアメリカ文化誌』(2003)など多数。
沓掛良彦(くつかけ・よしひこ)
1941年長野県生まれ。東京外国語大学名誉教授。西洋古典学専攻。『サッフォー・詩と生涯』(1988)、『酒詩話』(1998)、『詩林逍遥』(1999)、『壺中天酔歩』(2002)、『エロスの祭司・評伝ピエール・ルイス』(2003)ほか多数。
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