出版社内容情報
「精神現象学」は哲学史上最も難解な書物の1つとされている.ヘーゲル哲学の土台をなすこの著作をその体系の中にどう位置づけるべきか.原著の構成順に従って内容を詳細に解説し,その全般的特質を明らかにする.
内容説明
『精神現象学』は哲学史上最も難解な書物の一つとされている。ヘーゲル哲学の土台をなすこの著作をその体系の中にどう位置づけるべきか。原著の構成順に従って内容を詳細に解説し、その全般的特質を明らかにする。
目次
第1部 『現象学』全般に関して(『現象学』の意味と方法;歴史と『現象学』;『現象学』の構造)
第2部 意識、あるいは概念の現象学的な生成(感覚的確信;知覚;悟性)
第3部 自然的な自己意識から普遍的な自己意識へ(意識から自己意識への移行;自己意識と生命、自己意識の自立性;自己意識の自由、ストア柚木とスケプシス主義;不幸なる意識)
第4部 現象学的様相における理性(理性と観念論;自然の観察;人間の個体の観察;人間の仕事と行為の弁証法)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
またの名
13
「ヘーゲルの思想の各内容になんとしても三つの区分を見いだそうとするのはちょっと子供じみてる」と指摘する注が、正論過ぎる。始めから厳密な体系を構築したのではなく、自分が真理だと思ってたことは次々に誤りだと判明し、懐疑に継ぐ懐疑に見舞われる弁証法の中で最も繰り返される修飾語は動揺して不安定unruhigばかりという哲学書の研究書。動的な生命と生成のプロセスを、論理の手に余る言語化困難な神秘へ祀り上げずに、むしろ思考の論理のうちで捉えようとする過激な離れ業をやってのけたヘーゲル哲学の入り口が詳密に読み解かれる。2018/10/30
kentaro mori
3
⚫︎わたくしと即自存在とは、区別されるやいなや、その区別はただちに消滅する。存在のなかに自分自身をみいだし、したがって、この他者性のなかで自分の傍にとどまるのが、<自我>なのである。ところが、この思惟は、同時に自己意識の自由を意味している。思惟する自己意識とは、自由なる自己意識である。自由は、この思惟の観念によって定義されるものなのである。意志と我意とを混同しない度合に応じて、思惟と意志とは同一とみなされるのである。自由であるとは、主や奴であることではない。生命を背負ってあれこれの状況に身をおくことでは2025/01/27
Bevel
2
細かいところまで書いてあるのでとてもよかった。カントとフィヒテ・シェリングについて若干の予備知識はいるけれど、もっと読まれてほしいと思う。2013/04/28
鏡裕之
1
岩波書店は、こういう本をさっさと文庫化してほしい。この本を読みこなすのも相当知識レベルが必要だけれど、『精神現象学』の解説としてはやはり最高峰だと思う。だし、『ヘーゲル事典』と『ヘーゲル用語事典』の助けは必要。2023/07/25