出版社内容情報
分断と軍政――苦難の韓国現代史を全身をもって生きる作家・黄〓暎.彼が描くのは,底辺で生きる民衆の叫び,願いである.鮮烈な手法で韓国文学界に衝撃を与えた表題作「客地」ほか,作家自薦の中短篇集.
内容説明
暴力とピンハネの横行する干拓工事現場で、労働者たちが起ち上がるまでを描いた、黄晢暎鮮烈のデビュー作「客地」。朝鮮戦争で離散した家族と、押しつぶされていく高潔な心を描いた「韓氏年代記」。―60年「学生革命」から80年「光州蜂起」まで、苦難の韓国現代史を全身をもって生きた気鋭、黄晢暎の、日本初の自薦作品集!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NICK6
4
5篇。客地●韓国60年代現代史の最前線、労働哀史。スト破り横行と日常茶飯事の暴力、病怪我、ピンハネごまかしのヤバ過ぎる労苦。搾取側に沈黙させられる昼間、連帯破壊された個人に戻る饒舌な闇。ゆっくりと時間かけて始まる怒りの穂先が、あっちこっち中絶散開しての毎日。やっぱり昨日とおんなじだ。今日も明日も繰返し。絶望引っ込めさせられるアメ、希望葬りさるムチ。その連続におさらばする偶然が舞い降りた。しかし連なり脈打った集団の心と言葉が乱れ始める瞬間が哀しすぎる。現代史の一断面鋭角的描写、何よりエンタメ度濃厚。 2021/06/27
印度 洋一郎
1
韓国現代文学の巨匠の60年代から70年代にかけて執筆された中短編集。表題作の中編「客地(英題は"ストレンジ・ランド")」は、ある地方の炭鉱を巡る、労働者達の絶望的な日々と、その中で蜂起したストライキの顛末を描いている。労働者達のどうしようもない展望のなさ、事態を打開するために決起しても結局一枚岩になれない脆弱な立場、それに対して危機に際しても狡猾に切り抜ける経営者側の対比が残酷なまでに鮮やか。そして、「韓氏年代記」は北朝鮮出身の医師の苦い半生をテーマにした中編。朝鮮戦争下の国連軍が迫る平壌の描写は珍しい。2025/05/28