出版社内容情報
雪門玄松は,高岡国泰寺の管長をつとめ,若き日の西田幾多郎,鈴木大拙がその下に参禅した明治の高僧である.奇怪な還俗,乞食僧としての死など,その破天荒で謎にみちた生涯の真実を追い,仏教の心を描破した会心作.
内容説明
雪門玄松、忘れられた明治の一禅僧。富山県高岡国泰寺の管長をつとめ、若き日の西田幾多郎、鈴木大拙もその下に参禅した高僧だが、その生涯は謎に充ちている。国泰寺管長の座を捨て在家禅を唱導、さらに奇怪な還俗生活ののち、若狭の孤村で乞食僧として没した。この破天荒な僧の生きざまに深く心動かされた著者は、雪門ゆかりの地への旅を重ね、その実像に迫る。『一休』『良寛』につづいて、渾身の力を注いだ水上文学の結晶。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
67
古書店で発掘した本。元は、1986年、岩波書店から刊行され、90年に岩波の同時代ライブラリーとして改めて出されたもの。水上作品は主だったところは読んできた。同氏は、少年時代に禅寺の侍者を体験したこともあり、禅宗には関心が深いことは知られる。2022/04/01
ひよピパパ
7
富山県高岡市にある臨済宗国泰寺派の管長を務めた雪門玄松の生涯を扱ったエッセイ風小説。豪商の跡取りとして生まれるも出家、京都の相国寺荻野独園禅師に師事して修行し、印可を手にし、国泰寺管長になるも、10年でその座を返上し、隠棲する。雪門玄松はちょっと風変わりな禅師だ。西田幾多郎や鈴木大拙とも接点があり、水上は想像を加えながらその交流のさまを描き出している。雪門玄松・・・・・・。今後ちょっと注目したい人物だ。2018/02/14
恒々
4
禅への関心と、地域の接点を探りたくて手に取る。雪門玄松という僧の伝記である。宗教の本当の価値は、仏法行為ではなくて自分自身との対話や実践である、という考え方が示され、自身の「宗教」の捉え方に力強い信念を与えてくれた。西田幾多郎の本もまた読もう。辿る軌跡に登場する拠点は、普段気にも留めず通り過ぎてきた場所で、一つ一つに語り尽くせない歴史や繋がりがあることに感銘を受け、景色の見え方が変わった。地方あるあるだが、若者はやはり一度外に出ないとならぬ、ということも世の真実で、我が子にはぜひ旅をさせたいと思う。2021/04/29