出版社内容情報
民権思想の退潮期から第二次大戦期まで,内面的な精神の自由・社会的な自由と正義の実現を期して強い磁力を放ち続けた,竹越与三郎,末広鉄腸,河合栄治郎,清沢冽ら,リベラルな思想家の脈動に新たな光をあてる労作.
内容説明
個人の内的精神生活の自由、社会関係における自由と正義の実現をめざす「積極的」自由主義(I.バーリン)は、来るべき新しい社会のために残された現代世界の課題であろう。竹越与三郎、末広鉄腸、浮田和民、田沢義鋪、河合栄治郎、清沢洌。民権思想の退潮期から暗黒の第二次世界大戦期まで、日本社会の土壌深くに根を置き、強い磁力を放ち続けたリベラリズムの脈動に新たな光をあてることを通して、もうひとつの近代日本思想史への道を切り拓こうとする。
目次
1 竹越与三郎の新日本史観―国民史のふところにある“世界史”
2 末広鉄腸におけるアジアの解放―ホセ・リサールに触発されて
3 浮田和民の“倫理的帝国主義”―比較文化史的アプローチ
4 田沢義鋪における国民主義とリベラリズム―青年団運動の形成をめぐって
5 河合栄治郎の自由主義論―マルクス主義とファシズムのはざまに
6 清沢洌のファシズム批判―“戦争責任”の所在を問う
感想・レビュー
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てれまこし
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日本には広がらなかった自由主義のすそ野を、あまり認知度が高くない思想家に焦点を絞って探索する。確かに田澤義鋪のような思想家までを自由主義の系譜に入れれば、そのすそ野はぐっと広がる。日本土着の自由主義などと呼ばれるものまで視野に入ってくる。他方で、自由主義の定義を広げ過ぎると、日本リベラリズムの問題のどこまでが「日本」固有のもので、どこまでが「リベラリズム」特有のものかが曖昧になってしまう。欧米においても自由主義が帝国と結びつきやすい思想であることが分かった今日では、むしろ後者の問題が重要かもしれない。2017/07/22