出版社内容情報
謎の僧ドルイドとは誰か.ケルト民族の失われた宗教が物語るヨーロッパの基層文化とは-宗教学,図像学,民族誌の3つの視点から,文学と美術に痕跡をとどめるドルイド・イメージを集成し,その実像に迫る.
目次
第1章 ドルイドとは誰か(ケルト民族誌のなかのドルイド;ドルイドと創られた古代―ロマンティック・イメージの言説;ドルイド―息子による宗教)
第2章 ドルイド像の変遷(「ケルト」と近代ヨーロッパ文学;20世紀のドルイド研究史)
第3章 ドルイドとギリシア・ローマ人―古代文献の中のドルイド像
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
禿童子
17
ケルト社会の宗教指導者ドルイドについて3人の識者(特に鶴岡真弓と月川和雄)が徹底的に論考を展開。鶴岡の近代ヨーロッパの詩や絵画をはじめとする芸術家の霊感の源になったドルイド像の祖述は範囲が膨大でアイルランド民族主義はもとより英独仏の主な詩人と作家に及んでいます。月川のドルイド研究史から、散逸したポセイドニオスの著作とアレクサンドリア系による古典文献(ガリア戦記など)のローマ側から見た野蛮なイメージが今日のドルイド観に影響していると感じました。ゲール語文献の情報が少ないが、神話以外の当時の記録も見てみたい。2016/07/28
Takayuki Oohashi
16
中沢新一さんの箇所だけ読みました。キリスト教とケルト信仰というものが同じ三位一体の構造をしていて、「息子による宗教」という共通点を持つ反面、ケルトが自然=母的なものを持っているという点で違うという箇所が印象に残りました。昔、ケルト的な物語を書こうとして、構想だけあって頓挫したことがあり、その物語にまた再度息を吹き込もうと思って読みました。中沢さんの論で思想的なことは少し分かったような気がします。2016/03/12
ushjszidxkskils
1
1997年に出版されたこの本を読む限りではドルイドと言う存在の実情はよく分かって無い部分が多いのかなと。というのも当人たちが残した一次資料があまり無くケルト民族を征服したローマという勝者側視点の文章的資料に依存してる面が大きいみたいです。そのローマの知識階級が残した文章の資料、主にそれを基に記した近世の復古主義における著作や現代のケルト研究の中のドルイドに関わる部分を紹介してる感じの本といった所でしょうか。2021/03/26