出版社内容情報
昭和8年1月から4年余にわたる獄中生活で,河上は権力に屈せず,自己の学問的信念を貫いた.それを支えたのは家族たちの献身であった.書簡集は,近代の激動期を誠実に生き抜いた人びとの人間記録でもある.
内容説明
1932年8月、経済学者河上肇は官憲の眼からのがれるため地下に潜伏した。4年前の春、“赤い”教授として京都大学を事実上追放された河上は、一時は書斎生活にもどっていた。しかしやがてまたおのが良心の命ずるところに従って実践活動にふみ出し、地下生活を余儀なくされるのである。地下の隠れ家で日本共産党に入党した河上は、いくつかのアジトを転々としたのち、検挙拘留される。治安維持法違反の容疑であった。以後4年6か月、獄中での生活を送ることとなる。ここに収めたのは、獄中の河上が獄外にあてて出した手紙と、獄外から河上あてに送られて来た手紙、すなわち4年有半にわたる獄中獄外の往復書簡である。