出版社内容情報
今,悪の問題にどう迫り得るか.スピノザ,シオラン,リクール,レヴィナス,D.H.ロレンスらとの思想的対話による第1部「なぜ悪の哲学なのか」.第2部では独創的なドストエフスキー論を展開.哲学的挑戦の書.
内容説明
哲学は悪の問題にどう迫り得るか。スピノザ、シオラン、リクール、レヴィナス、D.H.ロレンスらとの思想的対話から、独創的なドストエフスキー読解へ。
目次
第1部 なぜ悪の哲学なのか(悪の哲学は可能か;悪の魅力と存在の過剰;きれいはきたない;祓われる罪 透明化する悪;「黙示録」と権力本能)
第2部 ドストエフスキーと悪(『悪霊』の世界と「黙示録」;二人の反ヒーローと理不尽な「世界」;神の義と人間の救済;悪のブラックホール;イノセンスの弱さと強さ)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ndj.
7
「悪のトポイ・カタログ」として悪を5つの類型に分類し、氏曰く「一種の魅力を持った、あるべからざる、しかし現実的な現象」であるところの悪をベースに『悪しき造物主』『マクベス』『アポカリプス論─現代人は愛しうるか』『悪霊』『カラマーゾフの兄弟』(主に大審問官)『白痴』を読み解いていくというなんとも野心的な試み。あらすじをなぞる程度の大味な論考だが、ここを起点に広がる世界は膨大だ。今読み返すと全体に優等生的な空気が漂っているのが難。2016/12/22
みか
1
第1章から第3章までは、悪の問題を哲学の立場から論じる基礎が分かります。第4章「祓われる罪/透明化する悪」では、日本におけるハレ・ケ・ケガレの三文法の意味、古代日本の罪と祓について論じています。第5章「『黙示録』と権力本能」では、レーニン像倒壊という現代史における象徴的事件をきっかけにして、ローレンスの『アポカリプス論』における人間の権力本能の根深さを論じています。ローレンスの考え方の背景には、シオランの思想に通じるような悪の問題への根本的な問い直しがあります。2008/08/22