目次
司馬遼太郎を考える
『坂の上の雲』を読む(準備と執筆に十年;秋山兄弟と正岡子規;「祖国防衛戦争」としての日露戦争;国民国家の形成と“国民”意識;想像の共同体としての国家;乃木批判にかさねた昭和軍部批判;「死んだ連中」への思い;無常観に彩られる最終章)
司馬文学を分析する(民衆文学者として;文明批評家としての目;文学と歴史、あるいは創造と史実;サラリーマン階層の文学;「あとがき」と「余談」の功罪;歴史観の根底にあったもの=俯瞰法と手堀り;明治維新の評価と天皇観;司馬良太等と松本清張)
司馬文学の個性(対談の記憶と『街道をゆく』;司馬文学における歴史の姿;司馬遼太郎のエネルギー)
著者等紹介
辻井喬[ツジイタカシ]
1927年東京都生まれ。詩人・作家、元セゾングループ代表。経営者・堤清二として戦後の経済界をリードする一方、独自の創作活動を続けてきた。著書に、詩集『異邦人』(室生犀星詩人賞)、『群青、わが黙示』(高見順賞)、『鷲がいて』(讀賣文学賞詩歌俳句賞)、『自伝詩のためのエスキース』(現代詩人賞)、小説『虹の岬』(谷崎潤一郎賞)、『父の肖像』(野間文芸賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mam’selle
3
昨冬逝去された辻井喬氏の司馬遼太郎論を再読。三島由紀夫や松本清張とも交流のあった同氏が洞察する司馬史観論は読みごたえがありました。辻井氏は財界では恐らく周りと話が遇わなかったのもうなずける、深い知性を持った稀有な経営者でもあったように、今更ながら気付きました。2014/04/30
Primavera
2
司馬氏と交流のあった著者が新船海三郎氏との対談の内容をまとめたものだが、対談形式はとられていない。なので、司馬作品、特に『坂の上の雲』などについての解説書といった趣が感じられる。司馬氏個人の文学の方向性や思考についても交流があったとは言え、けっして身贔屓になっておらず疑問すら投げかける客観性に好感が持てた。ただ、同じような内容が繰り返しになっていたりする点だけは少々残念な気もする。NHKのドラマではいまひとつ理解しかねていた子規の描写主義について、わかりやすく書かれていたのが個人的には大収穫だった。2012/02/25