内容説明
第二次大戦下、日本とドイツの連絡手段として残されていた潜水艦輸送―機密兵器や物資、人員の交流のため、はるかヨーロッパへの独航という過酷な任務を背負った遣独潜水艦とは、いかなるものだったのか。背景・経緯を明らかにし、生還を果たした乗員の手記、証言によりその足跡をつたえるノンフィクション。
目次
第1部 ドイツ派遣の経緯と各艦の戦歴(日本潜水艦ドイツ派遣の経緯;派遣艦の戦歴)
伊八潜訪独アルバム
第2部 竜宮紀行(旅立ち;死線;彼岸;竜宮城;斜陽;崩壊)
第3部 遣独潜水艦の生存者・関係者の想い出(竹内釼一氏(当時・伊三〇潜砲術長兼通信長)
桑長齊三氏(当時・伊八潜通信長)
小平邦紀氏(当時・伊一〇潜砲術長))
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ささ
2
■深海の使者 →潜水艦気質よもやま話、と続いて潜水艦の本。遣独潜水艦の背景と、経験者の方の証言と手記。田丸直吉氏による竜宮紀行がとても詳細。ドイツへ向かうまでの話とドイツでの暮らしの両方が記されていた。日本に帰ることになった田丸氏の同僚が家主に「帰る」とは言えず(計画を秘密裡に進めるため)急遽引っ越しをすると下手な嘘をついた為、喧嘩になってしまう話は少し微笑ましくもある。(その同僚の乗ったドイツの潜水艦は日本に到達することはできなかった)無事帰還を果たした人たちが持ち帰った歓迎会の写真の掲載あり。2023/01/18
Yasuhisa Ogura
1
とにかく、ワクワクした。本書は、第2大戦中、ドイツの最新の科学技術を求め、潜水艦で日本から欧州まで、英米軍の包囲網をかいくぐり航海した記録である。この作戦の成功のカギは、航海中にドイツ軍に設置してもらったレーダー探知装置であった。この装置のお陰で、敵の接近を事前に知ることができたのである。ドイツ到着後、著者は、その技術力の高さにため息をついている。敗戦濃厚となるまでドイツに留まった著者は、高速艇でスウェーデンに脱出するなど、さらにドラマチック。著者のドイツ滞在記も、興味深い。2014/01/21
naftan
1
第一部は、海自潜水艦長経験者中村英樹まとめたところの各遣独潜水艦の経歴。第二部は、伊二九潜に便乗した電探技術田丸直吉の艦内生活からドイツ脱出までの回想録。第三部は、伊三〇、伊八、伊八に補給を行った伊一〇乗員の経験談。/自動懸吊装置は水平を保つために装置が作動する都度、電磁弁が大きな音を立てて開閉してそれが艦内に響き渡った。モーターも停止している静寂な艦内で頻繁に作動するので哨戒の激しい海域では使い物になりそうも無かった。(p.138)2011/02/01