内容説明
大空に生きること二十余年―飛行時間二千時間を越える“大空の古武士”が、「零戦」「隼」の名声のかげに埋もれて多くを語られることなく悲運の歳月を重ねた名機「疾風」を駆って、みずからの青春を火花と散らした若き多くのサムライたちの熾烈な奮戦と苦悩にみちた日日を描いて後世に伝える感動の空戦記録。
目次
第1章 本土上空に敵機あり
第2章 明日をも知れぬ命なれど
第3章 大空に果てなんとも
第4章 疾風は征く血戦の空へ
第5章 白き雲ながれる果てに
第6章 わが翼は紅に燃えて
第7章 あゝ非情なる大空よ
著者等紹介
新藤常右衛門[シンドウツネエモン]
明治38年12月、鳥取県に生まれる。陸軍士官学校(36期)卒業。大正13年、少尉任官とともに操縦員を志願し、所沢気球隊付となる。大正15年、所沢飛行学校入校。昭和8年、大尉。昭和10年、ハルピンの飛行第11戦隊中隊長、のち陸大専科課程を終える。昭和16年、飛行第87戦隊長。岐阜飛行師団参謀・明野飛行学校教官をへて、昭和19年、第16飛行団長として比島戦線で奮闘する。昭和20年2月、明野飛行学校付。終戦時中佐。昭和51年5月12日歿
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感想・レビュー
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roatsu
20
陸士36期卒で将校操縦者として航空畑を歩んだ著者の回想録。戦前からの勤務体験を通じた帝国陸軍航空隊の生きた戦史としても価値ある一冊。昭和19年以降、四式戦疾風を集中装備した決戦部隊である第16飛行団の編成から比島での大活躍と終焉までが本書の最高潮。歴戦操縦者は減り、錬成なりたての若手が多数にもかかわらず著者の適切な統帥の下実力を上げて圧倒的な米軍を敵に回して善戦敢闘の末、国に殉じていった隷下第51、52戦隊の勇士達の様相を克明に後世に伝える。また、酒豪であり戦地での忙中閑のユーモア溢れる逸話に心和む。2017/06/07
小太郎
19
積読本消化。こういう戦記物を読むと旧日本軍という組織は最前線の当事者は本当に良く戦ったという感想。また後方の参謀や机上の空論に明け暮れていた戦争指導部の頭の悪さを強く感じます。書いた新藤さんは陸軍航空隊の立ち上げから勃興期そして激戦の最中まで最前線で戦った屈指の戦闘機乗り。なんと北九州では41歳でB29を撃墜、これは陸軍で最年長記録だそうです。こちらが期待した四式戦疾風の具体的な話は少なかったけど読み応えありました。2021/10/02