出版社内容情報
主人公ジョフロワ・ゲフィエにとって16、7年前に去った妻ブランシュとは、いったい誰なのか。日増しに薄れ、忘却の彼方に霞んでゆく彼女に対してこそ自由に想像力が働くのはなぜなのか。小説の原理を鋭く考えぬくことを要求する重層構造の小説世界には、人間が世界を正確に把握する困難と、それにもかかわらずその困難に挑まねばならぬという根本問題が示される。もっとも新しく先鋭な問題意識のうえに書き上げられた20世紀の記念碑ともいうべきアラゴンの代表作。
▼ルイ・アラゴン(1897
1982)=フランスの作家。著書に『パリの農夫』(1926)、『レ・コミュニスト』(1941-51)、『聖週間』(1958)など。訳者:稲田三吉(早稲田大学名誉教授)。
【第1部】
1、これは空想未来小説ではない
2、「私JE」と「あなた(方)VOUS」
3、象のための子守歌
4、誰も旅行者の言うことを聞かない
5、「ところで君、君の大恋愛は?」
6、すみれの名
7、神を変える
8、ナチ親衛隊員
9、「許して下さい。ボエームさん……」
【第2部】
1、手紙
2、悲しみの香りはどのようなものか
3、この犬どものための心臓|
4、……島はさまざまな音に満ちている……
5、「ジロドンさんのお邪魔になってはいけませんから」
6、私はただ内なる言語にのみ耳傾ける
7、くるくる回る蝸牛
8、アンガスとジェシカの物語
9、挿入=仮説
10、アンガスとジェシカの物語(つづきにして終り)
【第3部】
1、永遠に死に行く
2、未来という大麦のすべて
3、ひと房の髪の毛は仮説ではない
4、「あなたはどなたですか、ボヌール」
内容説明
言語の中でしか存在しない「私」。―その「私」が忘却の後を追いかける。人生の根本問題を問いかけ、小説世界の可能性を示唆した「小説家のための小説」。アラゴン渾身の力作!注目の本邦初訳。