出版社内容情報
われわれは《決断》を回避できない――。戦前のドイツで当時最高の知識人が促した決断とは,ナチへの,そして戦争への決断であった。ナチズムと微妙に交錯する世界的な思想家3人の決断主義の思想を徹底解明した思想家論の不朽の名著。
新版への序
序論
第1章 予備考察
1 歴史意識と主体性
自然法と歴史主義 キルケゴールとマルクス/根本的歴史性の問題構制
2 実証主義的な国家概念
国民的な権力国家/法治国家
3 自ら自身に矛先を向ける市民層
はじめに/生の哲学/青年運動/ゲオルゲ派/戦争の勃発と戦争イデオロギー/共和国と権威主義的な国家
第2章 ユンガー、シュミット、ハイデガーにおける「決断主義」
1 エルンスト・ユンガー―闘争
戦争の体験/闘争の意味/総動員と労働者/社会主義との関係
2 カール・シュミット―
内容説明
第2次大戦前夜、当時最高の知識人が促した『決断』とは何か。ナチズムと通底するファシスト的知性の思考を、犀利な論理で解明したデモーニッシュな思想家論。
目次
第1章 予備考察(歴史意識と主体性;実証主義的な国家概念;自ら自身に矛先を向ける市民層)
第2章 ユンガー、シュミット、ハイデガーにおける「決断主義」(エルンスト・ユンガー―闘争;カール・シュミット―決断;マルティン・ハイデガー―覚悟性 ほか)
第3章 離脱と解体(カール・シュミットにおける具体的な秩序思考;エルンスト・ユンガーにおける本質的思考;マルティン・ハイデガーにおける本質的思考と存在の問い)
第4章 決断と歴史性(これまでの考察の成果;人間的行為の構造;決断、歴史性、社会構造)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
14
純粋で抽象的な「決断」そのものを称揚し、行動の原理に据える決断主義の思想家としてシュミット、ユンガー、ハイデガーの思想を横断的に分析し、社会史的背景とその内在的矛盾を解き明かし批判している。それぞれの著者への批判と要約は単純だが、通常性の世界への嫌悪と無からの決断による陶酔、そしてその後の歴史的伝統や具体的秩序への回帰まで、見事に思考の過程の共通性を描いていて鮮やか。さらに、決断主義が抽象的な決断の肯定により主観の世界に留まるがゆえに、全体主義社会以外では現実に決断すら出来ないと辛辣2014/11/20
毒モナカジャンボ
0
決断主義という形で戦間期ドイツの思想のひとつを作り上げた三人の思考をまとめ、その批判を行う。対立する自然法的思考と歴史学的思考。後者の極限が決断主義を生み出す。決断のための決断を絶対的に称揚するため、決断の具体的な方途・内容は切り離され(あるいは隠蔽され)、またそのために実質的な決断を無限に引き延ばす点で、決断主義はそれ自身が批判したロマン主義の兄弟となる。決断主義に対峙する筆者の主張は訳者も言う通り凡庸であるが、決断主義はすでに現代日本を覆っているわけで、ここに振り返って考えることは無意味ではあるまい。2019/11/25