内容説明
本書では、呪術的な意味をおびたしぐさを取りあげて、多様な伝承の実態を紹介するとともに、しぐさの背後に横たわる民俗的な意味や伝承の論理について考察する。また、災害時に発する大声や生理現象であるクシャミ、発話や動作の同時現象といった民俗に着目し、伝承の諸相を提示すると同時に、そこに表出される感覚や心性について論じる。しぐさの呪的な意味が解き明かされる。
目次
俗信と心意
第1部 しぐさの呪術的世界と論理(息を「吹く」しぐさと「吸う」しぐさ;指を「隠す」しぐさと「弾く」しぐさ;股のぞきと狐の窓;「後ろ向き」の想像力;動物をめぐる呪い;エンガチョと斜十字)
第2部 身体・行為をめぐる感覚と心性(大声の力;クシャミと呪文;「一つ」と「二つ」の民俗;「同時に同じ」現象をめぐる感覚と論理)
しぐさと呪い
著者等紹介
常光徹[ツネミツトオル]
1948年高知県生まれ。國學院大學を卒業後、都内の中学校教員をへて、現在、国立歴史民俗博物館民俗研究系教授、総合研究大学院大学文化科学研究科教授。博士(民俗学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さきん
24
息を吸う、吹く。口笛を吹く。おまじないをする。霊柩車が来たら親指を隠すなど。それぞれに歴史や事例があって面白い。特に高知県の記録が豊富。今でも夜中に口笛を吹かないとか、親指を隠すをやっている人は多いのではないかと思う。2018/01/08
ペペロニ
13
風習や風土に基づいたしぐさについてまとめた1冊。くしゃみの後の罵りにバリエーションの豊富さが面白い。「チクショウ」「クソクラエ」は聞いたことあったが、「オモウタビニアエルカイ」とか「タッシャダヨ」、「トコザンマイ」など一見では意味がわからないものまで。風習に基づくしぐさは効力を与えたい相手がいてこそがほとんど。日常が大きく変化していく今の時代、消えていくしぐさ、新たに浸透していくしぐさがあるのかな。2020/08/22
tama
8
図書館本 他所から着いた土地の言葉が全く分からない人が、その土地の人と意思疎通するための原初のしぐさというものを知りたくて借りたが全然違った~。特定の地域で行われるしぐさと言葉まじないをこれでもかと集めて羅列している。論ずるよりお披露目?でも最後まで読めた。火傷したら呪文唱えて息を三回吹きかけろって、その前に水で冷やせよ。大阪ではクシャミした後にアラドッコイショというってなんかあまりにも出来過ぎてない?ひょっとしてからかわれたのでは?2018/02/27
Reina
8
面白かったです。くしゃみの話や同時に同じ、1つと2つなどは今でも残る分かりやすい話でした。2017/02/08
三柴ゆよし
7
以前、たしかあれは「爆笑問題のニッポンの教養」だったか、常光先生が「民俗学の基礎とは、見慣れたものを見慣れないように見ることだ」と仰っていたことを記憶している。「しぐさ」の民俗学的研究というのは、まさにそうした「見慣れたもの」を一旦括弧で括ったところから出発する。個々の事例をとりあげて分析を行っていく姿勢は地味にも見えるが、こうした研究の蓄積がいずれ全体の俯瞰につながるのかもしれない。非常に示唆に富む一冊。民俗学に興味がある方は一読あれ。2009/09/25