チーズとうじ虫―16世紀の一粉挽屋の世界像

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  • サイズ B6判/ページ数 314p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622011965
  • NDC分類 192.37
  • Cコード C0010

出版社内容情報

異端のコスモロジーゆえに、焚刑にされた農民メノッキオの思想形成。古文書館の闇の中からの再現された一冊。
著者カルロ・ギンズブルグは、1939年イタリアのトリノで生まれた。1957年ピサの高等師範学校に入学。しかし、歴史学を学ぶつもりはなく『戦争と平和』など小説ばかりを読んで過ごした。カンティモリやフルゴニの教えを受けるうち、マルク・ブロックの『奇跡を行う王』に接し、「歴史学の書物もこのうえなくおもしろいものになりうることがわかった」という。1959年より呪術や魔女の研究のため、各地の古文書館を訪ね、膨大な異端審問の記録をシャーロック・ホームズ並みの推理力で読み解くなかから、『夜の合戦』1966-86『ピエロ・デッラ・フランチェスカの謎』1994-98などが生まれた。そして最新論集『歴史・レトリック・立証』2000の翻訳も刊行となった(紹介作は、いずれもみすず書房刊)。現在はカリフォルニア大学で教えている。

内容説明

16世紀イタリアのフリウリ地方に住む粉挽屋。その男の名はドメニコ・スカンデッラといったが、人びとからはメノッキオと呼ばれていた。白のチョック、白のマント、白麻の帽子をいつも身につけ、裁判に現われるのも、この白ずくめの服装だった。彼は教皇庁に告訴されていた。その肝をつぶすような異端のコスモロジー故に。彼は説く、「私が考え信じているのは、すべてはカオスである、すなわち、土、空気、水、火、などこれらの全体はカオスである。この全体は次第に塊りになっていった。ちょうど牛乳のなかからチーズの塊ができ、そこからうじ虫があらわれてくるように、このうじ虫のように出現してくるものが天使たちなのだ…」。二度の裁判を経て、ついに焚刑にされたメノッキオ。著者ギンズブルグは、古文書館の完全な闇のなかから、一介の粉挽屋の生きたミクロコスモスを復元することに成功した。それは農民のラディカリズムの伝統のなかに息づく古くかつ新しい世界・生き方をみごとに伝えている。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

てことこ

2
カオスの塊としてのチーズから、うじ虫がわいてくるように天使が現れる。16世紀の一粉挽屋がどうしてこのような奇妙な世界像を持つに至ったのか。資料の精読から現れるのは民衆文化と貴族文化の浸透と対立である。「ミクロストリア」を切り開く作品。2009/07/05

belier

1
評判通りの傑作。16世紀イタリア北部に生きたひとりの風変わりな粉挽屋の世界観がどのように形成されたのか、異端裁判記録を読み込み、同時代の書物を分析して謎を探る。ミクロな個人史がマクロな西欧文化史へ繋がっていく。それにしても、この時代の最高の知識人とも共通するような世界観を一介の粉挽屋がなぜ持ちえたのか。書物の影響も大きかったろうが、口頭での伝統文化が階級を超えて影響したのではなかろうか。それが著者の意見のようだ。読んだ本などを元に自分なりの独自の世界観をつくりあげた粉挽屋メノッキオ。たいしたものである。2014/01/26

yanapong

0
16世紀の民衆文化における宗教観の一例。詳細な掘り起こしに引きこまれる。2010/12/01

ke_ta

0
推理小説的な面白さ2009/07/19

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