内容説明
花園の中の噴水のほとりで、たぐい稀な美貌の王妃と従う女たちは着物をぬぎすてた。そこに同じ数の男たちが挑みかかり、抱擁し交会し、いつ果てるともない淫欲に耽り始めた…妃の不倫に怒り苦しむシャーリヤル王は、夜ごと一人の処女と交わり、あくる朝に殺すようになる。大臣の聡明な娘シャーラザッドは、みずから王のもとに上り、世にも不思議な物語を夢のように紡ぎはじめてゆく。世界の奇書バートン版からの名訳に、古沢岩美の華麗な挿絵を付す。
目次
シャーリヤル王とその弟の物語
商人と魔神の物語(第一夜‐第二夜)
漁師と魔神の物語(第三夜‐第九夜)
バグダッドの軽子と三人の女(第九夜‐第十九夜)
三つの林檎の物語(第十九夜‐第二十夜)
ヌル・アル・ディン・アリとその息子バドル・アン・ディン・ハサンの物語(第二十夜‐第二十四夜)
せむし男の物語(第二十四夜‐第二十六夜)
著者等紹介
大場正史[オオバマサフミ]
1914‐1969年。佐賀県生まれ。本邦初の『バートン版千夜一夜物語』の完訳を遂げたほか、外国文学、性風俗をめぐる、多数の著書・訳書を遺した
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハイク
123
「アラビアンナイト」で知られ。第1巻は物語の成り立ちである。シャハリヤール王の弟王が妻の不貞を発見し死刑にした。シャハリヤールの妃も不貞をしていて、王は彼女を処刑する。王は世の中の女すべてを憎み、毎日新しい妻をむかえては翌朝に処刑した。大臣の娘シェーラザードは人々の命をすくうために王と結婚する。シェーラザードは婚礼の夜、王に物語を話聞かせ、その後毎晩新たな物語を話して聞かせ、千1夜物語の始まりとなった。第1巻では「ヌル・アド・ディン・アリとその息子・・・物語」が面白い。これが千一夜も続く長い物語である。2016/09/15
中玉ケビン砂糖
83
、【第1夜~第26夜】、こういう手の物語をいつか、寝食忘れてイッキに読んだならどんなに爽快だろうと思っていたが、さてさて、ようやくこれを開帳することになるとは、『神聖喜劇』やプルーストもそうだが、そろえてみたものの初めの一歩にものすごい葛藤が起きて、つまりページをめくった時点で、できれば中断して寝かせておくのはイヤだし、かといって机にかじりついて読破する根気もないという、取扱いに困るシロモノなのだ2015/01/04
kazuさん
43
シャーラザッドがシャーリヤル王に、翌朝殺されないように、毎晩、興味深い物語を聞かせる。本書はリチャード・バートンの訳出による。彼は教養の深い探検家で、アラビア語を含め29以上の言語に堪能で、更に、イスラム世界を熟知していた。前書きに、自信を持って翻訳したことが語られており、ヨーロッパ人がイスラム世界や東洋を知るためには、役に立つ内容であることが強調されている。バートン版は、エロティックだと言われているが、訳が正確かつ素直で、気品があり、古代から中世のイスラム世界を覗くことのできる楽しい物語だと感じた。2024/04/10
優希
41
不思議な夢物語のようで世俗的でもある物語。入れ子のような構造が難しく、なかなか物語に入っていけなかったのですが、途中からスッと読めるようになりました。ここからどのように物語が紡がれていくのか。続きも読みます。2024/01/31
加納恭史
33
アレクサンドル・デュマ著「モンテ・クリスト伯」でアラビアン・ナイトを称賛していたので、気になっている。確か若かかりし頃読んだ記憶がある。それは完訳「千一夜物語」であった。それはマリドリュス版でした。この本はバートン版で読み易くなっている。丁寧な注釈も多い。ただ何と言ってもカバーの挿し絵が妖艶で美しい。そこですっかり気に入った。挿し絵は古沢岩美さん。最初は「シャーリヤル王とその弟の物語」。まあ、女性不信や恐怖が物語の始まり。王や弟の留守の間に妻は奴隷の間男を引き入れていた。二人は相当なショックを受ける。2022/04/10