内容説明
手塚治虫、桑田二郎、杉浦茂、山岸涼子などの名作を、模写(マネ)することによって分析する異色マンガ論。「模写することは、なかば原作者になりきることであって、描いた人の気持ちまでワカる気がする」と断言する著者が、戦後マンガを縦横無尽にブッタ斬る。
目次
1 なつかしのマンガたち
2 マンガの過熱時代
3 マンガ女体論
4 コマについての2~3の事柄
5 マンガ家の実像と感性
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゲオルギオ・ハーン
25
主に1950年代〜1970年代頃の漫画、漫画家について著者が模写しながら解説するという面白い一冊。今では私たちは特に説明がなくても漫画のコマを正しい順番で読めるが、この時期はまだ確立しておらず番号をふっていたという。コマ割りが発展したのもこの時期で特に少女漫画のコマ割りは立体的なことに驚く。漫画界全体で表現力が豊かになったことでギャグ漫画が誕生したという指摘は面白い。著者の模写力の凄さは女体論で発揮されており、よくも線の違う漫画家たちの絵をここまで真似して論評できるものだと楽しみながら読みました。2023/08/12
ばりぼー
23
「マンガによる、マンガのための、マンガについての本」。他人のマンガはすべて著者の夏目房之介氏(漱石の孫)が模写したもので、これは表彰ものの名人芸です。昭和30年代に登場した『まぼろし探偵』『月光仮面』『ナショナル・キッド』などの月刊漫画誌のレトロなヒーローを紹介する『なつかしのマンガたち』、少年週刊誌が市場を席巻しTVアニメが隆盛を誇った昭和40年代を熱く語る『マンガの加熱時代』、少女マンガを含めた女体の神秘『マンガ女体論』(お尻作家あてクイズがナイス!笑)など、漫画の歴史を俯瞰した労作と言えます。2017/08/21
佐島楓
16
マンガコラムニスト・夏目房之介さんの本。戦後少年漫画史がわかるだけでなく、夏目さんご自身による有名漫画の模写がたくさん見られる。模写というのは作者に大変な思いいれと敬意がないとできないと思う。そういった意味で夏目さんの漫画に対する物凄い愛情が感じられる一冊である。2013/05/14
左手爆弾
2
マンガでマンガを読み解く。ポイントは「線」と「コマ」。漫画家ごとの特徴を線とコマ割りで細かく分析、というか変態的なまでに忠実に再現してみせる。圧巻なのはやはり「女体論」で、スレンダーで美しい女体、丸っこくてだらしない女体まで、様々な女体を「線」によって描き分ける。得意なものと苦手なものでやはり線のタッチが違う。マンガの本質と醍醐味を楽しめる一冊。ちなみに、ドラゴンボールやワンピースは出てこないよ。2016/10/15
sigismund
2
コマと線からマンガの歴史や背景を捉えてゆく、という内容がとても面白い。特に山岸涼子の「線の中性化」から、凹凸も性別も無いいわゆる「ロリコン」系の線へと話を持っていくあたり、かなりエキサイティングに読めた。2012/05/06