内容説明
一九八三年二月に報道された「横浜浮浪者連続殺傷事件」は、世間を驚かせた。少年たちが無抵抗の弱者に集団で襲いかかったという残酷さと、少年たちにほとんど罪の意識がなかったという無自覚さが、これまでの少年犯罪にみられなかった不気味さとしてクローズアップされた。と同時に、豊かとみえる社会に、豊かさと無縁の人々が存在することを強烈に印象づけた。なぜ少年たちは襲ったのか、襲われたのは何者だったのか。答を求めてドヤ街に暮す作家にみえてきたものは…。
目次
第1章 ヒトは路上に眠る
第2章 横浜放浪
第3章 中学生たちの夜
第4章 地を這って見よ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hatayan
36
一見豊かになった市民社会への違和感を覚えていた小説家の著者が、1983年に横浜で発生した浮浪者連続殺傷事件を機に、ドヤ街に身を埋め、加害者である少年にも聞き取りを行った記録。妻子や家がある状態では浮浪者にはなりきれない限界に気づきながらも、浮浪者と少年はともに社会からつまはじきにされた弱者だと著者は気づきます。一方、恵まれた家庭の子が襲撃に加わった原因は直接は明らかにされず、時代の背後で何かが大きく動いているのではないかと示唆します。同時期に出版された藤原新也の『東京漂流』と共通する問題意識を感じます。2021/01/22
コウみん
2
35年前にホームレスたちが少年たちにより殺された。 何故、彼らは横浜の街に住んでいるか。そして、彼らを殺した少年たちは何の理由もない大人たちを…。 両者の立場で見られる観点で書かれてあるのがこの本の読み方。2018/11/24
-
- 和書
- 昭和史が面白い 文春文庫