内容説明
親の夜逃げのために高校進学を諦めた照代。そんな彼女の元に差出人不明のメールが届き、女の子の幽霊が現れる。これらの謎が解ける時、照代を包む温かな真実が明らかになる。不思議な街「佐々良」で暮らし始めた照代の日々を、彼女を取り巻く人々との触れ合いと季節の移り変わりを通じて鮮明に描いた癒しと再生の物語。
著者等紹介
加納朋子[カノウトモコ]
1966年福岡県生まれ。文教大学女子短期大学部卒業。92年に『ななつのこ』で第3回鮎川哲也賞を受賞し、作家としてデビュー。95年には「ガラスの麒麟」で第48回日本推理作家協会賞(短編及び連作短編集部門)を受賞する
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感想・レビュー
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みっちゃん
130
読み始めてまず胸が痛んだ。いい加減な親の夜逃げでせっかく受かった高校に行けず、見知らぬ町に放り出されるとは!子供が辛い思いをする話はやりきれない。あの家に出現する幽霊の正体は全く予想外だったので、心底驚いたが、ひとが生きてゆくのに、物やお金も必要だけど、一番大事なのは誰かに大切にされる事、必要とされる事なんだ。これから照代にいっぱい良い事がありますように!記憶もおぼろげなんだけど、先に読んじゃった【はるひののはる】にちょっとだけ、照代ちゃん出てきたかしらん…いつか再読したいな。2014/10/04
みのゆかパパ@ぼちぼち読んでます
82
借金苦のために両親と離れ離れになり、見知らぬ田舎町で過ごすことになった少女・照代が、周囲の人たちとの関係のなかで、少しずつ前向きになっていく姿を描いた物語。姉妹作「ささらさや」の登場人物でもある佐々良の人たちの厳しくも温かい接し方や、それを受けて不器用ながらも成長していく照代の様子が微笑ましくもあり、染み入る感じもあり、加納作品ならではのハートウオーミングな世界にどっぷり浸らされる。児童虐待の連鎖という重い問題を抱えつつも、そこからの家族の再生に希望が見える感じも良く、前作以上にじわりとくる作品だった。2012/11/22
優希
79
凄くいいお話でした。両親の金銭問題で佐々良にやってきた15歳の少女・テルちゃん。思春期の揺れ動く時期に両親のもとを離れなければならないのが悲しかったですね。でも居候先の遠縁の親戚・久代さんを始めとして周りの大人や素直な子供たちに囲まれて成長していく姿は清々しかったです。佐々良は不思議な街で、女の子の幽霊が現れたり、起きそうもないことが起きるんですね。季節の移ろいが優しくテルちゃんを包んでいるのがあたたかくて心地よかったです。痛くなったり明るくなったり、皆の想いが伝わって元気のもらえる作品でした。2015/03/23
紫綺
78
「ささらさや」に続く話。主人公が女子高生のせいか(娘も女子高生)、前作より感情移入が強く、切ない話にググッときた。トゲトゲした照代が、じれったいくらいゆっくり丸くなって成長していく様に感動した。周りの人たちの時には厳しく、時には温かい対応が優しい。同世代の我が娘にも成長して欲しいものである。2011/03/30
myunclek
76
微妙な出だしのファンタジーでしたが、ラスト100ページくらいからが圧巻でした。あからさまには分からなくても心の奥底にある後悔。そして、そんな想いがあるからこその本物の優しさ。何だか、周りのみんなにありがとうって言いたくなりました。2017/04/21