内容説明
ダッソー邸「三重密室」事件の被害者はナチ戦犯か?容疑がかかる屋敷の主と三人のユダヤ人滞在客は、コフカ絶滅収容所の生存者とその子供と判明。それをもとに事件を追う矢吹駆とナディアは、三十年前のコフカの大量脱走劇の裏で起きた、もう一つの「三重密室」殺人の存在を掴んだ。さらに、二人の前には新たな死者が出現し…。三十年の刻を隔て現われた「三重密室」の謎?二つの密室殺人に底流するドイツ人哲学者・ハルバッハの「死の哲学」の影…。二十世紀の思想史を根底から覆す衝撃の事実とは!ミステリーを世界史と哲学の領域にまで踏み込ませた驚愕の本格傑作推理。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ArcCosine
3
一気に勢いをつけて読むことが出来たのは、解決編だったからかもしれません。カケルが指摘する真犯人は一番意外な人物ではありましたが、故に最後に明かされる真実の深みが増しました。まさに、虚無への供物へ捧げた作者の想いが良く練りこまれた内容だと思います。矢吹駆シリーズはミステリの枠を越えて問いかけてくるので、本当に楽しいです。と、感じれる人が果たしてどれだけ居るのやら……^_^2012/05/02
shiaruvy
2
【1996.07.25 初版】 コメントあとから2015/05/05
karatte
2
読了日不明。もう少しミステリ部分が緻密に書けていたら、古今東西のミステリの中でも十指に入る傑作になっていたと思うのだが。
甲斐シュンスケ
0
読んだ!読み終わった!難しかった!しかしこうやってミステリ仕立てで語ってもらわないと、哲学の問題に向きあうことはなかったかもしれない。殺すの死ぬの殺されるのは探偵小説に必要な要素。その死ぬということに現実に向き合った哲学、死ぬことを工場のように実行した収容所の問題を虚構の探偵小説の中で引き取ったらどうなったか。その結果を書いた小説に思える。2014/09/23
月光密造者
0
終盤のバルバッハと矢吹の議論に惹き込まれる。実存主義哲学が持て囃された時代に、仲間達と熱い時を過ごし、その後に深い虚無を味わった著者の内面との対話なのかもしれない。2010/07/13