出版社内容情報
この巨大な国と日本は出会いの時から誤解を積み重ねてきた。歴史を検証してロシアの本質に迫り、両国の未来を模索した秀逸な評論
内容説明
巨大な隣国・ロシアを、いかに理解するか。歴史をつぶさに検証してロシアの本質に迫り、両国の未来を模索した評論集。読売文学賞受賞。
目次
ロシアの特異性について
シビル汗の壁
海のシベリア
カムチャッカの寒村の大砲
湖と高原の運命
1 ~ 3件/全3件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
k5
93
シリーズ「私の頭の中の司馬史観」特別篇。中学生のころ司馬遼太郎を読んでいて、その思想が頭のどこかにこびりついているとしたら、そのことに感謝したくなるような名著です。冒頭から北方領土問題について、外交的に領土であることを主張し続けることは必要だが、実際にそれを取り戻すふりをして世論を盛り上げることは有害、とバッサリ。その後も人と人との境界の抱える問題について、シベリアやモンゴルをテーマに語ってくれます。現在、ロシアというかプーチンのやっていることは、もはやその範疇ではないですが、多くの示唆のある本です。2022/03/12
molysk
79
この巨大な隣国をどう理解するか。日本とのかかわりにおけるロシア像をとりだす。タタールのくびきと呼ばれるモンゴル帝国の苛烈な支配を脱して成立したロシアは、近代化を経てもその原型に遊牧民族の気風を残すことになる。コザックの東征でシベリアを得て極東に至り、江戸幕府と接触する。交渉の場でロシアが見せた洗練と粗野の二面性は、ヨーロッパの優雅な文化が流入する西の欧露と、原住民を荒々しく屈服させて得た東のシベリアを併せ持つ、この国の性なのだろう。ロシアとかかわりをもつには、この国の原型への理解が欠かせないのではないか。2023/03/19
レアル
69
ロシアの成立を遅らせたのはその周りに常に外敵がいた事が原因!と前置きをし、ロシアの歴史が意外と浅い事に驚かされる。そして農奴、略奪と日本人には理解できないだろう!と断りを入れながらその歴史は日本や朝鮮、中国を交えながらその特有な歴史観を述べている。ロシア側からの日本の発見という件も面白いし、そこから繋がる歴史観、そして北方領土の見識もなるほどと納得。2017/03/06
k5
67
今年を締めくくる意味でも再読。「ウクライナ軍は士気高く、都市Xを奪還せり」みたいな報道を見るたび、司馬史観の中立性に感動します。ここで司馬遼太郎が語っているのは、ロシアとは征服者であったと同時に、長い被征服者としての性格を持っているということではないかと思います。「理由もなく他国に押し入り、その国の領土を占領し、その国のひとびとを殺傷するなどというのは、まともな国のやることだろうか」という文章はどうしてもプーチンを連想させるけれど、この文章で司馬さんは日本のシベリア出兵を描いている。この公平感を持ちたい2022/12/04
i-miya
53
2014.02.08(02/08)(再読)司馬遼太郎著。 02/06 (あとがき) 私はここでロシアについて書いた、がロシア国家、ロシア人そのものを書いたわけではない。 そういう主題に適切な書き手となれば、(1)ハンガリーの農夫、(2)NYに住む老いたポーランド難民、(3)各国大学研究室の論文、が適切だろう。 私も世を経(ふ)りてしまった。 ロシアが関係する、『坂の上の雲』、『菜の花の沖』を書くために十数年もロシアについて考え込むはめになった。 2014/02/08