内容説明
小林秀雄の著作をたどると、政治についての言及はかなり多い。とことん文学的に思われた小林に、政治への鋭い洞察があまた潜んでいた。日本の思想、文学の見方がひっくり返る!
目次
第1章 理論
第2章 歴史
第3章 戦争
第4章 自由
第5章 政治
第6章 実践
第7章 日本
著者等紹介
中野剛志[ナカノタケシ]
1971年、神奈川県生まれ。1996年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。2001年に同大学院より優等修士号、2005年に博士号を取得。2003年、論文‘Theorising Economic Nationalism’(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。著書に山本七平賞奨励賞を受賞した『日本思想史新論』などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
90
著者はちょっと毛色の変わった経産省の方で様々な著作をものにされています。政治を嫌ったといわれている小林秀雄をその政治的な面を抉り出しています。従来の小林秀雄論とは異なり面白い観点から分析されていて新鮮な感じを受けました。ただ若干この題名にこだわりすぎた感がありやや断片的な感じを受けます。私は橋爪大三郎さんの「小林秀雄の悲哀」の方が読みやすいと思います。2021/06/20
Tomoichi
18
難解な小林秀雄を政治をキーワードに彼の考え方を読み解いていく。積読本の小林秀雄作品を読まないとと反省。小林秀雄に興味あるならオススメです。2021/05/09
アメヲトコ
6
21年3月刊。政治嫌いを公言していた小林秀雄の著作に実は一貫した政治思想が存在していたことを明らかにしようとする野心作。「自由(フリーダム)」をキーワードとして小林の思想に迫る分析は興味深く読みましたが、一方でとくに小林の思想をプラグマティズムとして位置付けたうえで丸山眞男を批判する終盤の議論は、やや小林秀雄の威を借りたかたちでの著者自身の政治思想の披露のようでもあり、やや強引さを感じました。2021/06/17
papico
4
欲しい答えが全てこの一冊に収められていた。先が益々見えない不安な現状の中、危機を乗り越える知恵と工夫を創り出してきた先人達の思想を掘り起こし、私達市井の人々に隅々まで行き渡るようなヴィジョンを示してくれる。TPP反対論を叫んでいた頃のように表舞台で引っ張っていく姿はもう無いけれど、益々豪胆に国民を勇気づけ、導いてくれる。小林氏を読み解く中で、今までには感じなかった大人の男の色気まで引き出されているように思えた。たくさんの日本国民に読まれて欲しい。これまで読んだ著者の作品の中で最も好きな一冊です。2021/05/08
かずりん
4
小林秀雄の著書は、考えるヒントから始まりドストエフスキー、人間の建設、本居宣長等読んだが消化不良ものが多いが関心はの持たれる人物である。今回は「小林秀雄の政治学」といった、おやっと思わせるタイトルに目が止まる。小林は政治嫌いの文学者として通っているが、本書は政治学に焦点を集中させている。氏の作品を政治という観点から解釈してみることで、今まで見えなかったものが浮かび上がってきたと言える。別の角度からのアプローチにより、氏の理解を深められる一冊である。2021/04/11