出版社内容情報
地球外知的生命の探求のために人生をかけて火星にやってきた生物学者のリキ・カワナベは、とある重大な発見をする。いっぽう火星生まれの少女、リリ-E1102は、地球へに観光を夢みて遠心型人工重力施設に通っていた。様々な人の想いが交錯する人間ドラマ。
内容説明
地球外知的生命の探求のため、人生をかけて火星にやってきた生物学者のリキ・カワナベは、スピラミンという物質の結晶構造の変化を発見する。いっぽう火星生まれの学生、リリ‐E1102は、地球に観光に行くことを夢みて遠心型人工重力施設に通っていた。地球で種子島在住の白石アオトは、ISDA職員として働きながらリリとの約束を思い出していた。カワナベの発見が世界を揺るがすとき、リリの身にも危機が迫り―地球と火星、遠く離れたふたつの星をめぐって人々の心が交錯していく壮大な人間ドラマ。
著者等紹介
小川哲[オガワサトシ]
1986年千葉県千葉市生まれ。2015年『ユートロニカのこちら側』で第3回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞しデビュー。2017年『ゲームの王国』(以上、早川書房刊)で第38回日本SF大賞、第31回山本周五郎賞を受賞。2022年『地図と拳』で第13回山田風太郎賞、翌年同作で第168回直木三十五賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
222
小川 哲は、新作中心に読んでいる作家です。 本書は、22世紀、火星を舞台にした群像劇でした。 NHKのドラマ化が決まっているようです。 https://www.nhk.jp/g/blog/2qeg1esst/ しかし21世紀の今の状況からすると、100年後でも火星には共住できていない気がします。 https://www.hayakawa-online.co.jp/shop/g/g0005210469/2025/11/27
パトラッシュ
201
宇宙植民地独立運動がテーマのSFは『月は無慈悲な夜の女王』を基準に考えるが、残念だがハインラインほどの壮大さもドラマ性もなかった。舞台である火星と地球との距離が絶望的に遠いため、戦争も政治も双方でノロノロ進むしかなくエンタメとしての迅速な展開が望めない。問題のカギを握る物質スピラミンの有用性について漠然としたままで、火星市民を独立に駆り立てるには弱すぎる。黒幕である富豪マディソンが権力欲のない人とされ、悪や陰謀がほぼ描かれない。スペオペでないにせよ読ませる力となる強烈なアイデア不在はSFとしては致命的だ。2025/11/09
ふみあき
127
優しさと愛にあふれたSF。だけど優しさと愛にあふれたSFなんて、わたしは読みたかない。『ユートロニカのこちら側』や『ゲームの王国』みたいなトガったSF長篇が、もう一度読みたい。2025/11/01
buchipanda3
103
「僕たちは光の速さという限界を超えられずにいる」。光より速く、はSF的浪漫の一つ。超えた時、別の次元が見えてくる。本作では分断の解法の示唆となり、加えて現代への皮肉にも思えた。人類が火星に住み始めてだいぶ経った頃、ある発見が為されたことで地球と火星の間で緊張が走る。科学が政治的思惑を動かし、やがて火星の夢へと繋がる。スケール感より人間描写が主体。その分、登場人物たちがいい味を出していた。上司に翻弄される仕事小説のようにも。人はどこでも人だ。「だからなんだ」の台詞と無人島に一つだけ科学理論をの問いが面白い。2025/12/15
ひさか
98
2025年10月早川書房刊。書き下ろし。女王はいつ出てくるのか?と読み進み、やっと出たら、大統領、応援団長まで出てきて、ラストに近い辺りのノリが独自で楽しい。振り返ると、始まり辺りの気の滅入るようなエラーの話からの展開は、ダイビングのような感じがあり、小川さんの構築する世界観にすっかり魅せられていまいました。今年度ベスト級の内容です。全3回のドラマ化の方も楽しみです。2025/12/14




