出版社内容情報
満州事変に始まる大正デモクラシー体制の崩壊過程を,内政と外交の相互関連性に着目しながら分析することともに,各政治主体の指導のあり方を検討することで次第に狭隘化しつつも存在しえた「平和と民主主義」の可能性を問い直す.
目次
第1部 大正デモクラシー体制崩壊期の内政と外交(危機の発生とその衝撃;危機の構造化とその限界;危機の現出と危機管理)
第2部 日本外交におけるソ連要因 1923―1937(ワシントン体制下におけるソ連要因;満州事変の勃発と日ソ関係の動揺;「防共的国際協調主義」とその帰結)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
8
「攻撃的な対ソ態度をとった皇道派主導の陸軍に対して、日ソ関係緩和の方向へ向けてイニシャティヴをとったのが海軍であった。また、こうした海軍のイニシャティヴに対して、ソ連側もこれに多大の期待をかけたのである…トロヤノフスキーと海軍艦隊派のリーダー加藤寛治大将との接触は、このような状況の中で生じたものであった…加藤は昭和七年三月十六日のソ連大使晩餐会に斎藤と共に出席している…海軍がこのような親ソ的態度をとったのは…第一には、「北守南進」という海軍の伝統…第二は…日ソ関係の悪化が陸軍主導型の軍拡の招来」するから。2020/12/15
バルジ
4
再読。読むごとに感銘を覚える一冊。殊に「大正デモクラシー体制」という穏健な政治的エリートに率いられた正統性が高くかつ内的要因では容易に動じない体制が対外危機の昂進で各政治アクターの権力バランスが変化し、一転して内政危機に陥る過程をダイナミックに論ずるさまは惚れ惚れしてしまう。また各政治アクター間の絶妙な政策的差異から構造的対立へと至る過程を論じるいく流れは圧巻てある。刊行から既に三十年以上経過してもなお本書の価値は色褪せない。当該期の研究としてまず第一に参照されるべき名著であろう。2025/05/08
バルジ
2
日本政治外交史研究の金字塔。著者が「大正デモクラシー体制」と呼ぶ安定的な内政・外交秩序が崩壊していく様子を相互の連関関係を重視して論じる。陸軍内部の対外構想の差異と内政を結びつける事により、内政面では現状打破、外交では対ソ強硬論に基づく対米英協調の政治構想を抱いていた皇道派の存在は、異なるベクトルから皇道派に対する陸軍中堅層と穏健派を接近させる。こうした軍部内の変化は当然内政全般に影響を及ぼし、岡田内閣の苦境を招く。 以上は本書のほんの一部部分であるが、その鮮やかな構成は最早感動に近い感慨を抱いてしまう。2020/03/07
Merkava
1
1930年代における対支外交というのは国内的要因(陸軍派閥対立と外務省)、対外的要因(対国民党外交)という側面で分析され、語られることが多いが、本書はそこに対ソ外交という要因を加えて日本の協調外交が行き詰った過程を子細に論述している。2012/10/18
gkmond
0
日中戦争直前には盧溝橋での一発の銃弾の衝撃にたえられないまでに、体制の統合機能が低下していたのである(p.144)が印象深かった。全体的におれなんかはお呼びじゃない本で筆者の息が長すぎてついていくのが大変だったけれども興味深く目を通すことはできた。2025/08/15
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