内容説明
日中戦争に関しては、その終焉から五十年を経て、新事実の発掘や新視角からの研究の深化が今日も続いている。しかし、太平洋戦争については、批判・擁護いずれの立場をとるにせよ、その位置づけが明らかになりつつあるが、日中戦争の全体像への言及は、いまだに十分とはいえない。本書は、勃発の原因、収拾の失敗、太平洋戦争への拡大過程、敗戦に至る状況などを克明にたどる、旧版『日中戦争』の全面改稿版である。
目次
1 前史(塘沽停戦協定の成立;「天羽声明」前後;「梅津・何協定」の成立 ほか)
2 日中戦争の展開(盧溝橋事件の勃発;和平と戦争の初期構想;上海から南京へ ほか)
3 太平洋戦争下の中国大陸(日米開戦;中国東西両面戦場の展開;大東亜省設置と東郷外相辞任 ほか)
感想・レビュー
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skunk_c
27
日中戦争そのものの経過と、和平を探る交渉を中心に記述。特に太平洋開戦後の展開は、他書にはあまり書かれていないので参考になった。特に戦争最終盤のビルマで、アメリカ式武装をした中国軍が南下して日本軍を打倒した話は初めて知った。また1943年三笠宮陸軍少佐が、南京で行った将校向け講話から、極めて冷静かつ批判的に日本の中国での行為を見ていたことが分かる。皇族だから許された発言だが、純粋軍人に欠けている面を垣間見た気がするのと、多分天皇もこうした見方をしていたのではないかと想像される。この部分だけでも読む価値あり。2018/02/06
ジュンジュン
13
日中戦争といえば、37年の盧溝橋事件から41年アジア太平洋戦争に組み込まれ、45年に終わる。前史として、本編1/3を費やして、31年の満州事変から説き起こす。言及はないが、十五年戦争として捉えているのかな?WWⅡに組み込まれた後半(41~45年)は、つい視線が太平洋に向いていた。なので、アメリカに補強された中国が、日本軍を打ち負かしていたとかは、新鮮な驚きだった。2021/08/16
Toska
8
「アメリカに無謀な戦争を仕掛けた日本」という問題の立て方では事の本質を見誤るかもしれない。「無謀ではない」と思い込んで中国に攻め込み、身動きできなくなったあげく米英を巻き込み、最後は真珠湾に至る。日中戦争と対米戦はひと続きの、盧溝橋に始まりミズーリ艦上で終結する、まさに「アジア・太平洋戦争」であった。他方、当時の日本が一致団結して侵略に邁進したわけではなく、諸勢力のせめぎ合いを通じて事態が進展していったこともよく分かる。良書。2022/08/18
Gen Kato
3
資料として。昭和初期の政治は対中国政策にふりまわされていたこと。思惑外れが重なって泥沼化していったことがつぶさにわかる。2015/05/08
がんぞ
3
かなり現共産党政権寄りの記述。【前史】は「満州国建国」で始まり蒋介石は「レコンキスタ」を誓ったとあるが。それ以前の「特殊利権」の経緯として義和団事変、日露戦争、孫文への援助、西原借款。「門戸開放」を言うアメリカの実態を記述しない不公平。1937年7月の時点で妥協して講和は「可能であったと思う」と著者は言う。甘いな。8月の上海陸戦隊への攻撃で、ハト派の石原莞爾は辞職し東条英機に変わった…。対米戦争を避けるには超人的《天才》が必要、まずは「外交暗号が解読されている」ことに気づき、その前提のネゴシエイトをして…2015/04/25