感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
俊
17
漢帝国時代の辺境の防衛と生活について解説した新書。狼煙や旗による合図の仕方、拠点周辺の地面を慣らすことによる人の出入りの把握、兵士や武器の記録管理など、紀元前という時代にもかかわらず、システムやマニュアルが完璧に出来上がっていたのが凄い。また、人命が軽く人権意識が希薄な時代というイメージがあったので、兵士の病欠や忌引が認められていたのには驚いた。金銭トラブルの記録や亡くなった兵士の遺体を故郷に届けたという記録を見ると、この時代にも今と同じく様々な人間ドラマがあったのだなと、ちょっと感動する。2014/09/28
まさる
5
万里の長城の書籍は多くあるが、長城に配置された兵士や周辺に入植した人々の日常などを記した書物は少ない。本著は前漢、後漢の時代の最前線であった西域の長城跡からの発掘史料を紹介しそこから、生き生きとした人々の様子を描写している。そこからはは任務の様子、配給される給与、病欠、忌引きの休暇申請、果ては兵士同士の金銭、物品の貸し借りのトラブルなど当時の多様な社会の様子を見ることができる。これ程までの史料が残されていることに驚きを感じると共に、漢という帝国が如何にシステマティックに機能していた毎に素直に感心をした2016/01/18
印度 洋一郎
3
中国の西域から発掘された、大量の木簡から読み解く漢の時代の辺境社会の実態。当時の西域は、安保上最大の脅威である遊牧民族・匈奴と対峙する最前線であり、又漢族が移住して新たな国土を作るフロンティアでもあった。国境の監視と、入植民の防衛をしながら、民生も行っていた人々の記録は、勤務、給与、賞罰、日々のトラブルまで多岐に渡り、「腰を怪我して病欠しましたが、回復したので復職します」という報告書等、中国が古代から官僚社会だった事がわかる。職場の人間関係の軋轢(金銭トラブルとか)も公式な記録に残っているのは驚きだ。2016/08/23
かみかみ
1
対匈奴の最前線であった漢帝国時代のフロンティアの社会に対して発掘された出土史料を中心にアプローチしていく内容。燧を最小の基礎単位とする郡県制と同様のシステムに組み込まれていることはもちろん、給与明細から物品の注文書、刃傷沙汰などのトラブルやその解決のための訴訟状といった幅広い内容の文書が発見されていることなどから、当時の漢帝国の統治の緻密性が明らかになり、興味深かった。2019/01/09
sfこと古谷俊一
1
西域で発掘された漢代の木簡を元にして、当時の辺境防備体制とそれにおける官僚機構を読み解いている。なにもかも文書ベースで機能する官僚社会ぶりに感心。2009/04/29