中公新書<br> 古代中国の刑罰―髑髏が語るもの

中公新書
古代中国の刑罰―髑髏が語るもの

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  • サイズ 新書判/ページ数 222p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784121012524
  • NDC分類 322.22
  • Cコード C1222

内容説明

洛陽南郊にある後漢時代の墓坑から出土した労役刑徒たちの多数の髑髏、埋葬者の履歴・刑名を刻んだ磚。西安郊外にある前漢景帝の陽陵付近から出土した刑具をつけた白骨遺体。湖北雲夢県睡虎地出土の秦代官吏の遺骨とおびただして竹簡。本書はこれらを地下からのメッセージとし、春秋公羊伝の伝義「春秋の義」を鑑に、秦漢時代の刑罰がいかなる体系をもち、いかに執行されたかを明らかにし、さらに西欧と中国の刑罰の差異にも及ぶ。

目次

第1章 地下からのメッセージ
第2章 秦漢の刑罰
第3章 心情への科罰
第4章 ロンドン塔と万里の長城―刑罰の東西

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

tom

21
古代中国の死刑は、打ち首か胴体切りの二つだけ。中国と言えば残虐刑のメッカという印象があるけれど、残虐刑が行われたのは、北方民族が中国に侵入し、政権を取ってから後のこと。そして、神をいただく西欧では、とことん残虐な死刑が蔓延。これはどうしてななのか。このことを文献(文献といっても木簡にかかれた昔の文字)を読んで解き明かす。併せて、死刑以外の刑罰は労働刑となり、建築作業等々に従事、社会資本の一つとなっていた。とにかく情報量の多いこと、著者の知識の豊富さに絶句しながら読了。2019/10/29

BIN

8
古代中国とあるが秦漢時代の刑罰についてです。作品中にも記載はありますが、西洋ものでよくある処刑の方法やら残酷さが書かれているわけではない。墓から発掘される情報から史書には書かれていない情報が得られるのは貴重ですね。確かに肉体に罰を加えず、労働力として使えるように罰を与えているのは特徴的。また原心定罪という心情も考慮するところのが面白い。情状酌量の余地で軽くなる場合はともかく、未遂以前に思っただけでも罪になるというマイナス方面での罰がデカイ。2016/10/21

姉勤

5
秦代・前漢代の刑罰について。刑の軽い方から、入れ墨(野蛮人扱い)鼻・耳削ぎ(外見からの差別)脚斬り(不自由さの差別)死刑(この世からの除外)と社会の構成員としてのグレードダウンを目的とし、実施において悪意から及んだ犯罪と看做されれば、未遂でも容疑でも同罪と扱われ、執行される拡大解釈の粛正が度々行われたと。しかし、肉体刑は漢代で禁止され、むしろ、生きながら徐々に苛むような嗜虐はキリスト教西洋社会の方が近代まで行われていた。それが解剖学、生物学の発展に寄与したとか。興味深い本だが、睡魔に度々襲われる。2013/07/25

富士さん

4
再読。古代中国が精密な法を持ちながら、それを主観的に運用しており、その根本には神の不在があるという本書の指摘は、古代中国の刑罰を語りながら中国全体を一言で説明してしまう切り口だと思います。法以外にも、官僚機構や科挙のような徹底的に客観的な制度を発達させながら、その運用が驚くほど恣意に満ちているのは今に至るまで健在な中国の謎ですが、それは社会は神ではなく、人によって作られ運用されるものである、という信念が中華文明のエートスだと考えれば矛盾なく理解できるのです。さらっと驚くべき慧眼が示されて超名著です。2016/10/23

てまり

1
おもに秦から漢にかけて、刑罰の論理と運用の移り変わりを春秋公羊伝にからめて。中国の刑罰が意外と残酷ではないことについての論が面白かった。西洋は神への供物という面があるから生贄としての火炙りや長く苦しむ刑があり、いっぽう人治である秦や漢では合理的な労役刑が栄えたと。ただ、おもしろいけど妥当かどうかは……とも思いますが。冒頭に出てくる労役者たちが具体的になぜ死んだのか結局わかんないのもモヤモヤ。しかし文章がかっこいいですね。やたらと先延ばしするのがスリラーっぽい。「読者へのお詫び」って章題は痺れる。2021/07/28

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