内容説明
祖母が遺した古い家に女が四人、私たちは共同生活を始めた。糸を染め、機を織り、庭に生い茂る草が食卓にのる。静かな、けれどたしかな実感に満ちて重ねられてゆく日々。やさしく硬質な結界。だれかが孕む葛藤も、どこかでつながっている四人の思いも、すべてはこの結界と共にある。心を持つ不思議な人形「りかさん」を真ん中にして―。生命の連なりを支える絆を、深く心に伝える物語。
著者等紹介
梨木香歩[ナシキカホ]
1959(昭和34)年、鹿児島生れ。英国に留学、児童文学者のベティ・モーガン・ボーエンに師事。『西の魔女が死んだ』で日本児童文学者協会新人賞、新美南吉児童文学賞、小学館文学賞を、『裏庭』で児童文学ファンタジー大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
395
蓉子の祖母の家に暮らす4人の女たちと、りかさん。あの家は、蓉子たち4人にとっては、まさに天蚕(ヤママユガ)の繭だったのだ。エンディングは想像を超えるが、不思議にこれほどに納得できるものもない。シルクロードのかなたから連綿と続く空間と、そして赤光の「時」から、あるいはもっと遥かな過去から延々と続く時間に想いを馳せる、梨木香歩の想像力と創造力。それらが珠玉のような梨木の言葉の「染め」と「織り」によって語られてゆく。そして、読後には、ひそやかでしみじみとした感動と、静謐な余韻が残るのである。最後の2行は秀逸。2012/06/27
さてさて
332
『人は何かを探すために生まれてきたのかも。そう考えたら、死ぬまでにその捜し物を見つけ出したいわね』と言う紀久の言葉に『本当にそうだろうか。それなら死ぬまでに捜し物が見つからなかった人々はどうなるのだろう』と思う蓉子。そんな蓉子が『私が探しているのは、隠れているりかさんなのだろうか』と自問するこの作品。そんな作品では、おばあちゃんの家で暮らす四人の女性の日常が描かれていました。様々な要素を盛り沢山に書き記す物語の中に『人はきっと日常を生き抜くために生まれるのです』という梨木さんの拘りを強く感じた作品でした。2022/11/07
mapion
282
他人同士の女性四人と人形一体が古民家で暮らす。彼女らは庭を手入れし食事を作り、手仕事を丹念に行い、丁寧に穏やかに過ごす。ある能面と人形を巡って話は広がり彼女らの感情に波が起こる。情念と芸術、虐げられた民が作る工芸品、人の縁、次世代に継がれる文化などが語られているようだが、あまり興味がもてない。私の能力では読みどころを見つけられなかった。不思議な事がありますが、そういうのも楽しくはない。話が広がる前の四人と一体の彼女らの静謐な生活を観ていられればそれでよかったなと。この小説に向かない私でした、残念。2025/09/08
風眠
274
(再読)祖母が遺した古い家。蓉子、紀久、与希子、マーガレット、女四人の共同生活。『りかさん』で張られてた伏線が回収され、市松人形のりかさんと、蓉子の祖母の過去などが明かされていく。染色、織物などの手仕事を通して、遥か昔から受け継がれてきた女たちの想い。顔も知らない、けれども、確かにその時代を生きた女達。苦しくて燃えたぎるような心を、織物に、人形に、注ぎ込んで、もがいて、それでも生きた日々という歴史。その日々は今に連なり、未来へと受け継がれる。りかさんを焼いた火は、そんな女達の埋み火だったのかもしれない。2015/03/27
SJW
269
古い家で4人の女性が、糸を染め、機を織り、野草を食べたり、自然を存分に楽しむ生活を始めた。そこの中心には蓉子の市松人形の「りかさん」が居て、4人の様々な葛藤や思いがその心地よい世界に連なっていく。人形、野草の料理、唐草模様、染物、機織り、シルクロードと話は広がり、話の終結が不安になったが、「りかさん」で締め括られて落ち着くことができた。描かれた世界は自分の世界とは全く異なるので、新しいことを経験したように感じる。梨木さんは、自然を楽しむ生活を描くのが素晴らしく、自分もしてみたいと考えるが、(続く)2018/03/27
-
- 電子書籍
- チョ・ドンギル~拳で語れ~【タテヨミ】…
-
- 電子書籍
- ハーフコート 2
-
- 電子書籍
- 骸骨王と恋するいばら姫 引きこもりの私…
-
- 電子書籍
- 鑑定能力で調合師になります 5 ヒーロ…
-
- 電子書籍
- ハレの日のイガリ的ヘアメイク - 本編