内容説明
「NIGHT PROWLER(夜、うろつく者)」と記された小さな紙片を、口の中に押し込まれ、次々と殺害される若い女。残酷な無差別殺人事件の陰には、カルトなホラー・ゲームに登場するヴァーチャルな怪物が―。暗鬱の「絶叫城」に展開する表題作ほか、「黒鳥亭」「壷中庵」「月宮殿」「雪華楼」「紅雨荘」と、底知れぬ恐怖を孕んで闇に聳える六つの迷宮の謎に、火村とアリスのコンビが挑む。
著者等紹介
有栖川有栖[アリスガワアリス]
1959(昭和34)年、大阪生れ。同志社大学卒。書店勤務を経て、’89(平成元)年『月光ゲーム』でデビュー。作風から「日本のエラリー・クイーン」と呼ばれ、ロジカルな謎解きには定評がある
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
495
綺麗な短編だな、という印象は強く受けたが、本格度は低く感じもした。物語をスマートに纏める事を作者が楽しんでいた時期なのか、表現に困るが、全体的にサプライズを仕掛けるよりもストーリーの香りや余韻を重視した構成になっているように感じられ、ともすると、火村助教授の推理(というか意見どまりな事もしばしば)も冴えてこない。事件自体が建物ありきなせいか、小粒な中身になってしまった感もある。『壺中庵~』のような不可解な事件が好きなので、これは割とお気に入り。『絶叫城~』はノンシリーズ長編でやった方が面白くなったのでは。2017/03/18
nobby
151
作家アリス11作目は〈建物〉がテーマの6短編で、全ての題名は今まで避けてた「ー殺人事件」で統一。密室に謎の裂傷に人の言動の裏や暗闇など鮮やかに描かれるが、あらためてトリックよりも犯罪に至った動機や背景に惹かれる自分を再確認。それ故にゲームでの残虐と重ねた通り魔殺人にのめり込んだ末に目にする真相の心情が切ない表題作「絶叫城殺人事件」が印象的。また「黒鳥亭殺人事件」でのアリスが少女の相手をする微笑ましさがゾッとする事実への道筋へと変化するのもいい!「雪華楼殺人事件」での突飛な想像も個人的には嫌いじゃない(笑)2021/06/13
yu
139
ドラマ化ということで。 「月宮殿」が一番よかったかなぁ。このシリーズは、ミステリーだけど、どこかライトな感じがしてしまう。 なので、さら~っと読める。ドラマの配役、やっぱり違和感感じるなぁ。火村先生のキャラを作りすぎな感じがしてしまう。2016/01/23
純
125
裏表紙に「底知れぬ恐怖を孕んで~」と書かれている上に、掲載作品全てに「殺人事件」と銘打っているから、よっぽど怖い内容なのだろうと、読むのを躊躇していた(怖いのが苦手なので…)。読んでみると思ったほど怖くなく、いつもの有栖川有栖作品だったので、少しホッとした。「黒鳥亭」と「月宮殿」が、特に面白かった。2016/03/13
🐾Yoko Omoto🐾
118
アリス&火村シリーズ。「絶叫城」は、連続通り魔事件という俗っぽい事件を論理的見地から解明していく様が見事で真相も良かった。また、殺人などをテーマにした創作物を「社会的に悪しき影響をもたらす」という風潮の世論に、反論を投じる見解には激しく同意。「紅雨荘」では冒頭の記述が本編と何の関わりがあるのかと訝って読み進めば、何とも素敵な種明かしにたどり着き笑みが漏れた。「黒鳥亭」は、辛いラストだが子供の純粋な発想を巧く真相に繋げている。全体にいつもより犯人寄りの心情描写が濃く、引き出しの多さを感じさせる短編集。2013/10/06