内容説明
祖国の興廃をこの一戦に賭けて、世界注視のうちに歴史が決定される。ロジェストヴェンスキー提督が、ロシアの大艦隊をひきいて長征に向う圧倒的な場面に始まり、連合艦隊司令長官東郷平八郎の死で終る、名高い「日本海海戦」の劇的な全貌。ロシア側の秘匿資料を初めて採り入れ、七カ月に及ぶ大回航の苦心と、迎え撃つ日本側の態度、海戦の詳細等々を克明に描いた空前の記録文学。
著者等紹介
吉村昭[ヨシムラアキラ]
1927(昭和2)年、東京日暮里生れ。学習院大学中退。’66年『星への旅』で太宰治賞を受賞。その後、ドキュメント作品に新境地を拓き、『戦艦武蔵』等で菊池寛賞を受賞。以来、多彩な長編小説を次々に発表。周到な取材と緻密な構成には定評がある。芸術院会員。主な作品に、『破獄』(読売文学賞)、『冷い夏、熱い夏』(毎日芸術賞)、『天狗争乱』(大仏次郎賞)等がある
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感想・レビュー
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yoshida
141
司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」でも有名な日露戦争。吉村昭氏はロシア側の秘匿資料も取り入れ、司馬氏の娯楽性を排し、まさに戦記文学と言える。ロシア海軍の第二太平洋艦隊が日本へ長征を開始。欧州から日本へたどり着くまでのロシア艦隊の苦悩。旅順攻略に焦り、祈る明治政府。東郷平八郎の緻密で冷静な作戦と判断による日本海海戦の完勝。小村外相の苦難によるポーツマス条約締結。何とか辛勝する日本。事実を知らない日本国民の暴動。捕虜待遇の日露の違い。迫るロシア革命。歴史は続き太平洋戦争から現在に至る。心震える重厚感溢れる傑作。2015/02/01
yomineko@猫屋敷寧ろ暑い
79
昨日は愛猫・アレキサンドル(ロシアンブルー)の16歳の誕生日でした。生きていれば、です。それを記念して昨夜、読み耽りました。日露戦争は「日本が勝った、万歳」などと言う軽いものではなく、日露両国とも多数の死者数を出し、多くの戦艦も傷つき、沈没して行きました。大国ロシアに勝った日本。でももう戦闘能力は残っておらず、戦争を続けようとするロシアを宥め、講和条約を必死の思いで締結。ニコライ二世の傍若無人ぶりに腹が立ちました。勝ったにしても戦争には何も良い事はありません。これに懲りて戦争を辞めればいいのに、この後も↓2021/07/09
読特
77
原作者の遺志に背いて映像化された「坂の上の雲」。同時期に連載されていた本作。日露戦争。歴史文学と記録文学。事実が淡々と記述されてるだけのようでいて、引き込まれる。その作風にはいつも感心させられる。ロシア側の立場での描述も長い。両者の視点で考えられる。勝利したのは日本。負けていれば独立国としての存続はなかっただろう。一方、得た者は乏しい。そして、失ったものも大きい。夥しい数の戦死者、戦傷者。政情不安。米国の警戒。そしてあの大戦につながっていく。TVドラマは美しく作られる。だが、現実の戦争はきれい事ではない。2023/07/14
shincha
72
『坂の上の雲』を読了後に本作品を読んだ。司馬遼太郎は、乃木希典に一縷の忖度を加え、吉村昭は、一切ない。ロジェストウィンスキーらロシア将校については、真逆の評価に感じた。『坂の上の雲』は、史実に基づいた小説だか、本作品は、全くのドキュメンタリーである。講和に向けた小村寿太郎の苦悩と国内の様子、ロシア人捕虜に対する日本人の対応、捕虜たちの帰還までの道のり、帰還後の裁判の様子、この日露戦争に日本が勝利した事による欧米の反応と大東亜戦争の遠因になったとの考察。とても勉強になる本作品。是非、今の若者に読んで欲しい。2022/04/19
大阪魂
67
りんさんからのおすすめ本。「深海の使者」は日独間を長躯潜水艦で往来する話、今度は日露戦争でぺテルブルグから日本まで大艦隊引き連れ半年以上かけて遠征してきたバルチック艦隊・ロジェストヴェンスキー中将のお話中心に旅順203高地攻略、日本海海戦、ポーツマス条約の混乱と大敗したあとの中将の処遇などなど!とにかくむっちゃ分厚い本やったし、大遠征の話は疲れたけど途中から一気読み!リーダーたるもの、東郷さんとか児玉さんみたく現場みて情報あつめて、人の声ききながらも前向きに決断する!ゆーのが大事やなあってつくづくおもた!2024/01/03