内容説明
加賀宮腰の小さな古着屋の若き主人、五兵衛は質流れの百二十石の小さな中古船を手に入れた。持ち前の前向きな明るさと商売度胸のよさで初の大坂渡航は大きな儲けを生んだ。以降、数々の海難を乗り越え、交易先を広げ、三百七十石、千石と船も買い換え、破竹の勢いに見えたが。幕末期、日本一の豪商としてその名を轟かせた銭屋五兵衛の怒涛の生涯を描く歴史巨編。波瀾の幕が開く。
感想・レビュー
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S.Borodino
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いたるところで加賀藩や幕府の閉鎖的な体質、そして時代遅れの武士という身分への批判がされていて、(ちょっとくどいくらいだが)作品全体を通して、商人の性根、天下一の豪商、そして海の男たる銭五に相応しい進歩的で、開放的な勢いを感じる。作品の時代背景もさることながら、本書が執筆された時代(1995)も無視できない。閉鎖的な時代のムードを吹き飛ばし、単純に読む者に勇気と冒険心を与えてくれる作品だ。私はいわゆる歴史小説を初めて読むが、歴史の知識はもちろん、なにより言葉が大変勉強になる。 2013/09/27