内容説明
二千五百年前、春秋末期の乱世に生きた孔子の人間像を描く歴史小説。『論語』に収められた孔子の詞はどのような背景を持って生れてきたのか。十四年にも亘る亡命・遊説の旅は、何を目的としていたのか。孔子と弟子たちが戦乱の中原を放浪する姿を、架空の弟子が語る形で、独自の解釈を与えてゆく。現代にも通ずる「乱世を生きる知恵」を提示した最後の長編。野間文芸賞受賞作。
著者等紹介
井上靖[イノウエヤスシ]
1907‐1991。旭川市生れ。京都大学文学部哲学科卒業後、毎日新聞社に入社。戦後になって多くの小説を手掛け、1949(昭和24)年「闘牛」で芥川賞を受賞。’51年に退社して以降は、次々と名作を産み出す。「天平の甍」での芸術選奨(’57年)、「おろしや国酔夢譚」での日本文学大賞(’69年)、「孔子」での野間文芸賞(’89年)など受賞作多数。’76年文化勲章を受章した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kawai Hideki
90
孔子の死後30年頃、まだ「論語」が形を成していない時代に、孔子研究家のコミュニティで、孔子を直接知る最後の老弟子が語る、という体裁をとった井上靖の孔子論。戦乱の時代の国の興亡と人々の生活の変化。孔子が中原で夢見ていた世界と、それを阻んだ天命の厳しさ。市井の人々にとっての仁と政治家にとっての仁との違い。故郷の家々にともる灯のように、時代を超えて実現されるべき究極の幸せの姿。などが描かれる。孔子を絶対視し過ぎる傾向と、論点の多くが「〇〇は本当に孔子の言葉か否か」のような議論に終始していたのが気になった。2017/03/06
KAZOO
69
これは孔子の伝記ということではなく、、論語や当時の時代を記しています。架空の弟子が研究会で語るという形式になっていて論語がある程度分からないと若干わかりにくい点があるかもしれません。私は井上靖の小説の中でも好きなほうで、宮崎市定さんの「論語を読む」と同様に論語について入門的な役割を果たしてくれていると思います。2015/02/21
大阪魂
48
井上靖さんの最後の長編、ゆーから風林火山とか敦煌みたいな感動のお話なんかなあ、って手にとったんやけどぜんぜんちごた💦孔子没後30年、孔子の残した言葉について、架空の弟子・蔫薑老人が、生前の孔子におおたこともない孔子研究会メンバーからの求めに応じて解説するってお話…「50にして天命を知る」の「天命」とは?孔子が大事にしてた「仁」とは?弟子の顔回、子路、子貢の誰が孔子の後継者たりえたか?とかについて議論しまくらはるねんけど…うーん、難しかったわあ…「近き者説(よろこ)べば遠き者来る」が政治のキモ、なるほど…2024/10/12
kawa
35
30数年前に挫折した本書、今回は読了。面白かったかと問われれば?なのだが、著者の数々の著作を読んだり、文学館を訪ねたり、10年弱のメーター経験力で、粘り勝ち読書という感じ。孔子の教えの足元にも到達しないレベル、でもそれなりの充実感。2022/07/07
荒野の狼
31
孔子が3大弟子の子路・顔回・子貢の3人と放浪した14年とその中心思想(天命や仁)に対する解釈を孔子の架空の弟子が語るという形で小説化されたもの。小説の前半で著者のメッセージの大部分は語られ、後半は繰り返しが多い。孔子のことばと挿話の出典は論語と史記で、井上靖の創作ではない。論語そのものは、秩序だって配列されていませんが、この本を読むと論語にでてくる各挿話の年代的前後関係、それぞれの弟子の性格、諸国の王たち、孔子の中心思想がわかるようになる。論語の入門書には最適。2009/08/22
-
- 電子書籍
- 池袋ヲトメ道戦記(2)
-
- 電子書籍
- 雷神 風の市兵衛[2] 祥伝社文庫