出版社内容情報
今世紀初頭、柔道を世界に伝播するため世界を放浪し、異種間格闘技戦を行なって二千試合無敗の伝説を作った男がいた。グレーシー柔術の祖ともなったこの日本人の青春を、長期海外取材で描く本格歴史ノンフィクション。
明治末期から昭和初期にかけて、柔道を世界に伝播させるため、世界を放浪して各国の力自慢と異種間格闘技を繰り広げ、2000試合無敗の伝説を作った男がいた。本名・前田光世。「前田大和」とも、「コンデ・コマ(高麗伯爵)」とも呼ばれたこの男は、講道館からアメリカに派遣されるが、あえて教義を破り、プロレスラーやアメリカン・フットボールの選手に格闘試合を挑み、はるかに大きな相手をものともせず、関節技、投げ技などで勝利を収め続けた。時は日露戦争で日本海軍がロシア・バルチック艦隊を撃破し、劇的な勝利を収めた時代。セオドア・ルーズベルト米大統領も柔道を習ったほどに、日本が国際社会で注目されたその頃に、「大和魂」の伝道者となり、また日本人移民の希望の星となった前田の生涯を記す、本格歴史ノンフィクション。著者は、キューバの図書館の隅から発掘した膨大な新聞記事をもとに、忘れ去られたこの日本のヒーローの素顔に迫った。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さすらいの雑魚
33
弘前の不良が講道館と出会い、最強と信じた柔道を世界に広めるべく異種格闘技戦を繰り返し無敵の格闘王となる前半は明治格闘浪漫譚な趣き。黄禍論に孤立し差別に苦しむ日系移民を支え私設領事といわれるほど尽くし彼等の希望の光となり闘う後半は挫折と奮起の物語。個人としては功成り名を揚げ故郷に錦を飾る事もできるのに一身を開拓民に捧げ異郷に死す。男子が憧れずにいられない国士無双の完璧な生涯かと。グレイシー一族に柔術を伝えたのもこの時代で、彼の柔の技が主に代わり日本に凱旋したのか、人の想いは時を超えるのか。ちょっと泣ける。2021/07/02
snakedoctorK
4
前田光世氏はブラジル移民に助力されてたんですね。2014/07/11
鷹羽かずみ
2
柔道家としての前田光世伝を期待して読んだのだが、アマゾン開拓の話が多くちょっと肩すかしを食らった感。しかし、今まであまり知らなかったブラジル(アマゾン)移民の話が読めたので、これはこれで面白かった。2014/02/19
よしだ まさし
2
神山典士『ライオンの夢 前田光世伝』小学館を読了。 コンデ・コマこと前田光世の伝記である。講道館柔道を海外に布教するために富田常次郎(『姿三四郎』の著者、富田常雄の父にして、講道館最初の門弟であり、なおかつ初期の講道館四天王のひとり)とともにアメリカに渡り、そのままヨーロッパから中南米をまわって異種格闘技戦を繰りひろげ、ひたすら勝ち続けた柔道家。グレイシー柔術で世界中に名を知られることとなったグレイシー一族に柔道を教えた男。最後はブラジルに定住して日本人移民の援助に奔走した男。 その破天荒な武術家の2012/10/26
けじ
2
『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』で登場した前田光世の生涯が気になって読んでみた。埋もれ消えかかっていた資料や証言を収集して、本書にまとめた著者の情熱は凄い。しかし前田光世の挌闘家としての活躍の詳細を期待していたところ、講道館の歴史や南米アマゾンの日系移民にまで対象が拡散してしまったため、焦点がぼやけてしまったような印象を受けた。2012/08/18