出版社内容情報
ペスト菌を発見した細菌学の父・北里柴三郎から、ノーベル賞物理学者・朝永振一郎まで、近代日本の科学の礎を築いた32人の科学者伝。「科学者も人の子」ということを、ふんだんな逸話で再認識できる一冊。
ブラウウン管を使った小さな暗箱のような電子式受像装置に、「イ」の字が写し出された。墨で書かれたイロハの「イ」の字が、ただ画面に静止して見えるだけに過ぎない。だが、高柳健次郎の胸には、生涯最大と言っていいほどの喜びが込み上げていた。なにしろ、ブラウン管にテレビ画像を映しだしたのは、世界で初めての快挙だったのである。??。1926年12月25日のことである。 天文学者・木村栄(ひさし)は、宮沢賢治の童話『風の又三郎』に実名で登場する。「木村博士は痩せて、眼のキョロキョロした人だけれども、僕はまあ好きだねえ、それに、テニスが非常にうまいんだよ……」岩手県水沢の緯度観測所で、二十四年間にわたって深夜観測をつづけた木村は、地軸が地球自身に対して動く極運動の法則性を、z項の発見よって初めて説明した。 細菌学者の父・北里柴三郎から、ノーベル賞学者・朝永振一郎まで、近代日本の科学の礎を築いた32人の科学者列伝。「科学者も人の子」ということを、ふんだんにおりこんだ逸話で再認識することができる一冊。
内容説明
最初の映像は「イ」だった―テレビの黎明から破傷風菌の培養まで明治維新後、日本の科学の礎はどう築かれてきたか。近代日本の科学の創始者32人の列伝。
目次
長井長義―喘息の薬エフェドリンを抽出した薬学の開拓者
北里柴三郎―破傷風菌を純粋培養した日本細菌学の父
高峰譲吉―世界に進出した研究は酒造りから始まった
田中館愛橘―六十歳定年を唱え後輩を育てた地球物理学者
田辺朔郎―十九歳で夢見た琵琶湖疎水を実現した土木工学者
牧野富太郎―妻の支えで生涯を植物学に捧げた独学の研究者
山極勝三郎―世界初の人工癌に成功した不屈の医学者
池田菊苗―昆布の旨味成分を発見した化学者
古在由直―足尾銅山の鉱毒を調査した反骨の農芸化学者
呉秀三―監禁から治療へ 日本の精神医学の建立者〔ほか〕