出版社内容情報
川の流れに押し流される小舟のように、「運命」というに波に翻弄される人生。そこには、人と人とが出会うがゆえの、愛や憎しみ、喜びや悲しみがある。そんな人間模様を痛切に描き出した人間ドラマの傑作版。
▼第1話/日々▼第2話/餓鬼(前編)▼第3話/餓鬼(後編)▼第4話/皮▼第5話/背中▼第6話/旗▼第7話/氷の林檎▼第8話/扉●あらすじ/正一の家は母子家庭。母親がひとりで切り盛りする自宅の喫茶店には、売れない漫画家の吉岡と八百屋の若旦那がいつもたむろっている。母は日頃、そんなふたりを「人生に失敗した大人」と呼んでいた。だがある日、母親が正一を置いて家を出ていく。学校に警察がやってきて、母は、会社の金を横領した男と一緒だと告げられる。その日、誰もいないはずの喫茶店に帰った正一を、カウンタ?の中から吉岡が迎える。そしてこの日を境に、吉岡と正一との共同生活が始まった(第1話)。▼私立探偵の松本に、代議士から仕事の依頼が入った。最近、娘の様子がおかしいので身辺を調べてほしいという。10日間、娘を尾行した松本は、特に何もなしと代議士に報告するのだったが、9月20日頃、娘がひどくおびえた様子だったという母親の供述が気にかかり、再調査をはじめる(第3話)。▼母親が死んだ。だが、母の死を本当に悼む子供は、兄弟4人の中でひとりとしていない。何故なら母は、おせっかいやきのお調子者で、他人の言いなりに金を貸してしまうため、兄弟が全員