出版社内容情報
森 博嗣[モリ ヒロシ]
著・文・その他
内容説明
T大学大学院生の簑沢杜萌は、夏休みに帰省した実家で仮面の誘拐者に捕らえられた。杜萌も別の場所に拉致されていた家族も無事だったが、実家にいたはずの兄だけが、どこかへ消えてしまった。眩い光、朦朧とする意識、夏の日に起こった事件に隠された過去とは?『幻惑の死と使途』と同時期に起った事件を描く。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
467
本書は前作『幻想の死と使途』の偶数章を司る作品であり、2つで1つの物語が構成されるという凝った作りだが、内容にはお互いの作品に密接に絡み合う要素はほとんどなく、それぞれ独立した作品として読める。私は常々森ミステリには事件解決までのタイムスパンが非常に長い事を特徴として挙げており、これを個人的に森ミステリ特有のモラトリアムな期間と呼んでいるのだが、本書はそれが最も長く、実に2ヶ月も掛かっている。真相や施された少女マンガ趣味とも云える幻想味も含めてシリーズの世界観の没入度が読者の評価を決定するように思える。2016/03/06
勇波
299
『幻惑の死と使徒』の隙間に埋められた少し哀しい物語でした。『夏のレプリカ』での萌絵ちゃんはいつもよりちょっぴり大人です。(西畑刑事に指パッチンをせがんでましたが…)そのかわりと言ってはなんですが、佐々木の叔母様が暴走しまくってます(笑)隙間の事件だった為か犀川先生と西之園さん以外の場面や思考が多くある意味とても新鮮でした★2015/06/21
ehirano1
251
萌絵が犀川先生そっくりになってきているような気がするのですが、気のせいでしょうか?2018/01/13
マーム
199
S&Mシリーズ第7弾。萌絵の高校時代の友人である杜萌の父・県会議員簑沢泰史一家が誘拐され、杜萌もその事件に巻き込まれる。その犯人グループのうち2名が射殺されるという奇妙な事態に。更には杜萌の盲目の兄・素生も行方不明になっており、事件は混迷を極めます。犯人の一人が被っていた仮面の意味するところが終始頭を悩ませます。また、仮面にまつわる犀川の話はミスリードを誘う感じもしましたが、私の理解が及ばず轟沈。今回の萌絵は感情を素直に露にしつつよく頑張ったなという印象。また、最後にちょっとした救いがあったのも良かった。2012/11/17
胆石の騒めき
196
(★★★☆☆)新幹線にビュッフェがあった時代の話なんだ。叙述トリックのミステリであり、通常はそれは…と感じるところ。ただ、このシリーズでは、謎を解くぞと肩に力を入れて読んでいるのではなく、心地よい程度のミステリの中で躍動する登場人物を楽しんでいるので、あまり何も思わない。作品中に出てくる2つの絵が混ざったジグソーパズル。本格推理小説で謎解きを諦めてしまう理由の一つでもあるし、現実世界でも思考停止になる要因の一つ。論理的思考力が要求されるのだろう。ところで、夢の中で夢だと気付くことってあるのかな?2018/06/24