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内容説明
迫りくるガン死を前に、1人の精神科医が、全生涯の総力を傾けて、生と死のはざまにある自己を凝視し、語りつづけた、稀有の記録。
目次
ガンと失明の間―目が見えなくなった!
命の勘定―どのくらい生きられるのか
死とロマンの誘惑―「いま」と「あと」
意味の実現―ガンと闘うのではない
食卓を囲んで―僕の爪を見てください
曲がった足とカルマ―異様な幻視体験
苦痛と精神―過去と現在をつなぐ
自分をさかのぼる―原罪意識とアイデンティティ
学問的自己―ホリスティック・サイコセラピー
あるがままの精神医学―森田療法の周辺
空無の世界―近づく死の彼方へ
通りすぎた女性たち―パンドラの函をあける
蝕まれてゆく体―ニューロ・エンドクライノーマ
正常と異常―神経ブロックの森の下で
植物人間への反抗―まだ、あきらめてはいけない
脳と恐怖―死についての遠い質問
最後の自由―僕の意識を確かめてほしい
臨終の日―口述は続いていた〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshi41101
4
岩井寛氏の自分を最後まで見つめ続ける生き様がすごい。そしてそれを受け止め続けた松岡氏も苦しかったに違いない。岩井氏が口述で書いた森田療法も読みたい。2009/05/09
katta
4
再読になるか再々読になるか、衝撃的な闘病記を読んだあと、必ずもう一度読みたくなる。1986年にガンで死去した聖マリアンナ大学精神科教授の、最期の3ヶ月を松岡正剛が聞き書きしたもの。最後の最後まで精神を清明に保つため、エンドルフィンなど多幸感を持つ麻酔を入れず死の直前まで自分が何を考えていたかを記録していくと言う壮大な実験の書。譫妄状態になってもまだ自身を省みようとする姿に素直に感動する。2009/06/16
だーさん
1
死にゆく作者が自らを実験台として生と死を探る壮絶なドキュメント。自分、医学、宗教ととりとめなく続き、自らの宇宙を暗示して旅立って行く。彼の思想を理解したとはとても言えないが、最後の一秒まで考える葦であろうとする作者に恐れさえ感じる。2019/08/04
保山ひャン
1
ガンに冒された精神科医岩井寛が松岡正剛を相手に死の直前まで語ったことを記した本。自己とは何か、と言った最終講義的なものから、思い出話、病状と治療の経過など。意識を明確に持っていたい、という強烈な意思と、意識が混濁して精神がおかしくなっていくさままでしっかり残そうとする試みは、死とは何かについてのまさに死に直面した者にのみ知れる真実を明かさんとする勢いだ。痛みに耐えながら明晰に話す岩井氏がついに聴き取り困難な言葉を連ねる死の寸前に至るくだりは胸が破裂するほどのクライマックスだった。2019/02/11