出版社内容情報
圧倒的事実の<生と死>
8月9日にすでに壊された<私>。死と共存する<私>は古希を目前にして遍路の旅に出る。<私>の半生とは一体何であったのか……。生の意味を問う表題作のほか、1945年7月世界最初の核実験が行われた場所・ニューメキシコ州トリニティ。グランド・ゼロの地点に立ち《人間の原点》を見た著者の苦渋に満ちた想いを刻す「トリニティからトリニティへ」を併録。野間文芸賞受賞。
林京子
私は立ちすくんだ。地平線まで見渡せる荒野には風もない。風にそよぐ草もない。虫の音もない静まった荒野は自然でありながら、これほど不自然に硬直した自然はなかった。荒野は、原子爆弾の閃光をあびた日以来、沈黙し、君臨していたガラガラ蛇の生さえ受けつけなかった。大地は病んでいたのである。――<「著者から読者へ」より>
林 京子[ハヤシ キョウコ]
著・文・その他
川西 政明[カワニシ マサアキ]
解説
内容説明
八月九日にすでに壊された「私」。死と共存する「私」は古希を目前にして遍路の旅に出る。「私」の半生とは一体何であったのか…。生の意味を問う表題作のほか、一九四五年七月世界最初の核実験が行なわれた場所・ニューメキシコ州トリニティ。グランド・ゼロの地点に立ち「人間の原点」を見た著者の苦渋に満ちた想いを刻す「トリニティからトリニティへ」を併録。野間文芸賞受賞。
目次
長い時間をかけた人間の経験
トリニティからトリニティへ
著者等紹介
林京子[ハヤシキョウコ]
1930・8・28~。小説家。長崎県の生まれ。長崎高女卒。父の仕事先である上海で14歳まで暮す。1945年、帰国。三菱兵器大橋工場に動員され、勤務中に被爆、爆心地から1.4キロの地点だった。その体験をもとに書いた「祭りの場」で群像新人賞、芥川賞受賞。その後も鎮魂と祈りの作品を中心に執筆。著書に『ギヤマンビードロ』『ミッシェルの口紅』『無きが如き』『上海』(女流文学賞)『三界の家』(川端賞)『やすらかに今はねむり給え』(谷崎賞)『長い時間をかけた人間の経験』(野間賞)など
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