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内容説明
大作「新・平家物語」を完成した著者は、息つく暇もなく、南北朝を題材とする「私本太平記」の執筆にかかった。古代末期から中世へ―もはや王朝のみやびは影をひそめ、人間のどす黒さがあらわに出てきた時代、しかも歴史的には空白の時代である。史林の闇に分け入るとき、著者は使命感と創作意欲の高まりを禁じえなかったという。開巻第一、足利又太郎(のちの尊氏)が颯爽と京に登場する。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
105
吉川英治さんによる太平記。私はこの時代は詳しくなく興味深く読了しました。後醍醐天皇が即位し英邁さを示す京。鎌倉では執権北条高時の暗愚さに御家人や地頭の不満が募る。足利高氏は上洛し見聞を広める。気骨のある若い公家。婆娑羅大名の佐々木道誉。鎌倉の嫌疑による逼塞から解かれた高氏は、祖父が遺した足利家の血書を見る。犬公方と呼ばれる北条高時の暗愚さ。登子との縁談。藤夜叉との再会。物語が始まる。かつて大河ドラマで放送された太平記。その重厚さを思いつつ読む。血書は高氏が焼く。血書の内容は焼かねばなるまい。次巻も楽しみ。2022/02/20
chantal(シャンタール)
89
今年の月イチ吉川英治は「太平記」。前回の平家物語で頼朝が鎌倉幕府を開いてから150年後、まだ高氏と名乗っていた頃から物語は始まる。清和源氏の流れをくむ名門足利家、守役は一色、頼朝旗揚げ時からの忠臣佐々木定綱の末裔は後に六角と京極に分かれる。また土岐家も登場、戦国時代の物語ではよく聞く名前がゾロゾロ。まだまだ若く、天下を望もうなんて思いもよらない高氏が今後どのように執権北条家を打倒して行くのか、楽しみだ。高氏はどちらかというとブ男だったそうだが、私の印象は真田広之。イケメンすぎ😅2019/01/03
Willie the Wildcat
87
様々な出会いと将来を暗喩する事象。ヒトの面では、道誉と日野俊基と共に、何気に草心尼・覚一母子も気になる。事象では、鑁阿寺の置文と地蔵菩薩。物心両面での指針という感。但し、母からもらった地蔵菩薩のお守り袋の”行方”がシニカル。踏まえての第一巻のハイライトは、やはり”天狗”。婆娑羅道誉の縦横無尽さなど、溜まりに溜まっていた鬱憤を発散。高氏にも婆娑羅の神が降臨したかのような大立ち回り。義兄・守時が執権となるも、高時”院政”の時代に突入。2022/01/25
優希
80
古代から中世へと移り、人間の黒い部分が見え始めた時代を舞台にしているのですね。歴史的にはあまり語られることのない南北朝時代の闇へと足を踏み入れたような気がします。足利尊氏の物語とも重なるのも興味深いところです。2019/01/16
ケロリーヌ@ベルばら同盟
49
何故だろう。鎌倉は青雲に彩られ、室町は漆黒の闇を篝火がぬらりと照らす。そんなイメージがある。頼朝死して122年、蒙古の悪夢からも40年を経て戦は古老の昔語りとなった泰平の元享二年、都には新帝が立ち、鎌倉では、時の執権北条高時の奇矯さが御家人達の胸中を騒がす。八幡太郎義家を祖とする源氏の名門、足利家の若き惣領息子又太郎高氏は、父祖代々の悲願が己が一身に課せられている事を知る。荒ぶる公達、婆娑羅大名、美姫。役者が次々に登場する。雷鳴は遠く、軍馬の蹄音も未だ微か。しかし暗雲に碧空は翳り始める。次巻へと心は逸る。2019/01/31