内容説明
海尊と名乗る法師が村々を懴悔し流浪するという東北の貴人伝説を背景に、学童疎開し孤児となった啓太の罪の生涯を描く田村俊子賞、芸術祭賞受賞「常陸坊海尊」、和泉式部に纒る伝説を題材に、九州の炭坑事故で冒された豊市、その母と嫁に、式部の後裔という魔性の尼僧を絡め社会の底辺に生きる人々の深い哀しみを描く毎日芸術賞受賞「かさぶた式部考」、方言を駆使し民衆の苦悩に迫る戯曲二篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
AR読書記録
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これはこう、いろいろ考えるな。男の描くファム・ファタルと女の描くそれの違いとか。東北地方と異人の親和性とか高度成長の陰としての九州とか(公害だけじゃない)みたいな、地域がそれぞれに持つ“何か”とか。天に座して罪を浄化するのでなく、地を這い罪に寄り添う“神”だとか。“社会”のような、個としての顔をもたない大きなものに対しては、善悪つけやすい、怒りもその向け方もわかりやすいものはあるけれど、一個一個の人間とその関係においては、善悪、聖俗、浄不浄などは混じりあって混沌としたものである、というのが真実なような。2014/05/14
mstr_kk
1
戯曲2本とも、力のある作品だとは思いましたが、突き抜けるような感銘はありませんでした。説明的なセリフが散見し、展開がやや平板で、大味に感じられます。それぞれの作品中の「闇」の部分もワンパターン。ただ、悲惨な生の露出には凄みがありました。どちらの戯曲も、全編方言で展開しますが、そうでない作品も読んでみたいです。2023/02/06
watershed
1
舞台は東北と熊本。方言の異様なまでの迫力に圧倒される。2022/04/18
のほほんなかえるさん
0
衝撃だった。この劇作家の言葉の力はずば抜けている。2011/01/05