内容説明
大友の皇子は生きていた。戦乱の近江京を逃れ、勇猛な影武者達を従えて東へ向かっていた―古代日本を震撼させた壬申の乱で、大海人の皇子と皇位を争い敗れ、自殺したとされる悲劇の皇子の最期に潜む数々の謎…。古代史通作家が「日本書紀」の記述の矛盾を衝き、大胆な推理と構想で描く会心の歴史ロマン。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
獺祭魚の食客@鯨鯢
19
壬申の乱という古代の内乱をSF作家の豊田有恒氏が大胆な仮説の元、東国も舞台にした物語にしています。 中大兄皇子と大海人皇子は兄弟ということになっていますが、腹違いの兄弟でなおかつ兄の年下であるなど謎が多く、それぞれ百済系と高句麗系であるという複雑な関係が、この様な血で血を洗う政争の元凶になったということがわかります。 日本書紀は天武が都合の悪いことを記述させず蘇我氏にその責任をかずけたため天武自身は謎多き存在となっています。物語中の関東各地に残る地名を見ると渡来人との関係を感じます。2018/09/09
Berlin1888
1
井沢元彦先生の『日本史の反逆者』とかぶっている、異説壬申の乱。天武天皇=大海人皇子の設定も同じなのですが、キャラクターはまったく逆さまで、殺人狂扱いのダーティーな天皇! これを手にした読者のうち、いったいどれだけの方が、古代を舞台にした伊賀忍者対甲賀忍者のバトルなんて展開を予想したでしょう… まあ面白かったし、いいや。2013/11/05
冬至楼均
1
甲賀(忍者)対伊賀(皇子)の戦いはこんな昔から…。と言う話では無いか。作者は一貫して遁甲=忍術として扱っていますが、無関係とは言わないまでも、やはり別物ですよね。2012/07/20
yuzi
0
面白かった!飛鳥・奈良時代の時代小説といったら黒岩重吾氏、以上!だった浅薄な知識に豊田さんが追加されました。凝り性の方らしく、正史「日本書紀」を通読された知識や、独自の朝鮮史研究などを土台に一見突飛に思える設定もあながち外れていないんじゃないかと思わせてくれる。ドキわくのハラ!主人公の大友の皇子像が「懐風藻」の人物評まんまな感じで好きです。古代史はロマン!!これからも古代史小説は読んでいきたい。とりあえず「日本書紀」が読みたくなったのでネット注文した包みが届くのを楽しみにしている。2020/03/23
M
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この時代の事柄は何をもって正しいとするのか判断が難しい部分はあるが、大友皇子、大海人皇子、十市皇女といった人々が遁甲(忍びや格闘術)に長けた人間だったという設定などはかなり突飛。あまりおすすめしない。2018/10/07