内容説明
揺るぎ無いはずの「日常」が乱れる時、人の心の奥に潜む「闇」と直面する。精神の内からわき出る「妖怪」という名の怪異。他人の視線を以上に畏れる者。煙に格別の執着心を持つ火消し。笑うことができない峻厳なる女教師。海に強い嫌悪感を抱く私小説家。人が出会う「恐怖」の形を多様に描き出す十の怪異譚。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
78
ノベルズで再読です。憑物落としの登場しない妖怪物語。物語に関わった人たちのサイドストーリー的になっています。秋彦さんが登場しないので、心に妖怪が染み付き、厭な思いを引き出している感がありますね。それでも物語に引き込んでしまう筆致が凄いです。2018/08/15
勇波
49
講談社文庫版、文藝春秋版、文春文庫版と既読済み。ノベルズ版で「雨」「風」「雲」と揃えたのでこの際「陰」も。が手もとに置いたもののまだほぼ鮮明に覚えているのでとりあえず今はいいや。って「定本」って何よ?!キリがない★2017/11/19
神太郎
46
シリーズ短編集。こんな人いたっけなぁと頭をこねくり回しながら思い出していた次第。人の心に闇が巣食うからこそそこには怪異が宿り、妖怪の形をなす。正にそんな感じの10編。人間だもの、心のなかに色々なものを抱えているわけですね。だから、見えないものも見えてしまうときがある。上手く、お話の中に妖怪を取り込んだなぁと思います。短いながらもじっくり読ませていただきました!2021/08/27
星落秋風五丈原
31
各編異なる人物設定のもとに描かれており、テーマや時代設定は共通するものの、作品間のつながりはない。舞台は京極堂シリーズと同じく、終戦後しばらくたった昭和20年代後半。最後の「川赤子」のみ京極堂シリーズに登場する作家「わたし」を主人公とする。2004/12/01
烟々羅
28
収録十作のうち一篇を読んで、オチのようにでてきた語り手の名前が思い出されずに調べ、シリーズ今までの登場人物がそれぞれに怪異を語る構成かと受け取った。 ならば前作『塗仏』二作と同様に謎解きはセットの「百器徒然袋 雨」にあるかと推察し並行して読むかしばし検討、『雨』の目次は三部構成とみて断念した。 感心したのは、似たような鬱屈、記憶の疵を語りながら、常連の語り手、関口氏の文は冒頭からそれとわかること。ここに特徴がと指摘できないほどにさりげなく、ひとりの作家が文体を使い分けるのは難しい。あからさまなら容易だけど2013/10/23