内容説明
イスラムの「嫌西欧」はどこで生まれたのか。イスラムへの「違和感」の核心にあるものは何か。
目次
序章 なぜイスラム教徒は近代文明に反発するのか?(二〇二五年の逆転;イスラムとキリスト教 ほか)
第1章 邂逅―ジャバルティーの史観(早すぎた「明治維新」;伝統的イスラム知識人・ジャバルティー ほか)
第2章 相克―アリー・ムバーラクの史観(挫折した「鹿鳴館時代」;「近代的」行政官僚・アリー・ムバーラク ほか)
第3章 超克―ムハンマド・アブドゥの史観(エジプト人のためのエジプト;知の巨人・ムハンマド・アブドゥ ほか)
結章 トラウマとしての近代(イスラムは近代に敵対しているか?;つくられたトラウマ ほか)
著者等紹介
加藤博[カトウヒロシ]
1948年、香川県生まれ。一橋大学商学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程修了。東京大学東洋文化研究所助手、東洋大学文学部助教授を経て一橋大学大学院経済学研究科教授。経済学博士。専攻は中東社会経済史、イスラム社会論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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skunk_c
66
ナポレオンの侵攻、イギリスによる保護国・植民地化という近代化した西欧の荒波にもまれたエジプトのイスラーム知識人が、西欧の近代化文明をどのように思索し、対応しようとしたかを、ジャバルティ、アリー・ムバーラク、ムハンマド・アブドゥの3人の知識人を事例に考察したもの。いずれも初めて知る名前であったが、ムハンマド・アリー、オラービーなどの著名人との対比もあり、興味深く読んだ、そこに描かれるのは、ハチントンの描く世界像とは異なる、近代化を承認しながら西欧文明と格闘する姿で、イスラーム=反近代の図式を打ち破るものだ。2021/10/01
i-miya
11
2006.05.30 1948香川県 一橋大学商学部 一橋大学大学院経済研究科教授 P192 あとがき イスラム知識人が近代ヨーロッパとの対応の中で 近代をネガティブに評価するようになった過程を分析 2006.03.20 イスラム世界の近代 ムハマンド風刺漫画事件 P007 2025年の逆転 2000 イスラム 13億人 21% 2025 イスラム 20億人 25% 2000 イスラム教徒 19% キリスト教徒 30% 2025 イスラム教徒 30% キリスト教徒 25% P012 ジョン・エス2006/05/31
しもふさ
5
他文明がどのように西欧に向き合ったのか知りたくて読みました。キリスト教は聖教分離されていることで聖なる権威へ接続するものが限られることから、この権威を独占し、他文明等への優越を正当化するための仕組みになっているとの指摘は印象的でした。2021/12/18
雲をみるひと
3
イスラム思想のみならず、登場する思想家も馴染みがないが、エジプトにおいて近代化の中でイスラム的思想をどう位置付けて来たかがわかり興味深い。どの程度、現代のイスラム社会に影響与えている考え方かはわからないが、あくまで近代化の中でイスラムをどう位置づけるかで他の宗教は関係ないという思考や政教一致のイスラムが政教分離の他一神教を修正したものという考え方は大変参考になった。2018/07/19
葉
3
イスラム教徒の過激な行動は近代文明を否定しているような思想もあるが、多くのイスラム教徒は苦々しく重い、近代文明の生活スタイルに憧れていると書かれている。また、イスラムの別の本で読んだが、西欧の文明の浸透がイスラムの文明を希薄化させてしまうことを嫌っているイスラム教徒の過激な行動について重要としていたため、近年これがイスラムで問題の一つとなっているのではないかと思った。ナポレオンのエジプト占領によるジャパルディーの衝撃は大きかったらしい。近代、ヨーロッパ、キリストの融合のつまづきの石になっているとしている。2014/12/03
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