出版社内容情報
日本初のノーベル賞受賞者の回想に今の時代を生き抜くヒントが隠されている日本初のノーベル賞受賞者である湯川博士が、幼少時から青年期までの人生を回想。物理学の道を歩き始めるまでを描く。後年、平和論・教育論など多彩な活躍をした著者の半生から、学問の道と人生の意義を知る。
湯川 秀樹[ユカワ ヒデキ]
著・文・その他
内容説明
日本人として初めてノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士が、自らの前半生をふり返る。「イワン(言わん)ちゃん」とあだ名された無口な少年は、読書を通じて空想の翼を羽ばたかせた。数学に熱中するも「小川君はアインシュタインのようになるだろう」という友人の一言がきっかけとなり、理論物理学への道が開けていく―。京都ならではの風景とともに家族の姿や学生生活がいきいきと描かれ、偉大な先人を身近に感じる名著。
著者等紹介
湯川秀樹[ユカワヒデキ]
1907年、東京生まれ。京都帝大理学部物理学科卒。39年、京都帝大教授となり翌年、学士院恩賜賞を受賞。43年、文化勲章を受ける。49年、日本人として初のノーベル物理学賞受賞。研究者、科学啓蒙家としての活動以外に、平和論・文明論・科学論・教育論・人生論など多彩な分野で活躍した。81年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おさむ
57
日本人初のノーベル賞受賞者の湯川秀樹氏の回想記。よくまあここまで詳細に若い頃の経験を記憶しているものですね、やはり天才はアタマのつくりが違う。和歌山出身のご両親も教養人だったそうです。内向的で、厭世的で、アンバランスだった、など自分の欠点をつまびらかにしている所も好感がもてます。その辺はある種の「関西人気質」かもしれませんね。2016/11/02
Willie the Wildcat
48
朴訥と語る理論物理学への道。表現力が秀悦!生い立ちはもちろんだが、当時の文化、生活、街並みなどの描写に躍動感があり、活き活きと頭に浮かぶ。祖父との素読が根底か。自己描写の観点では、内気となるきっかけや、見合い・結婚に至る自己分析が印象的。”結果論”としての物理だが、(私生活を含めて)その経緯を見ると、哲学における物理という印象。数学テストの「66点」の件も興味深い。現代にも繋がる日本教育の問題を提起している感。それにしても「権兵衛」はすごいなぁ・・・。(笑)2015/05/20
TATA
46
好著。日本初のノーベル賞受賞者となった湯川秀樹さんの自伝、とはいえまだ若かりし時代まででノーベル賞は出てこず、中性子理論の入り口に差しかかるところまで。自らを孤独者と位置づけるあたり、今でいう陰キャであったのかもと。けれど、良き友、良き師、そして一生を捧げるべき学問に巡りあえたことが何より素晴らしい。百年前の湯川氏の懊悩が理解できるだけでも読む価値がある一冊。数学を選ばなかった理由になるほどなと。大学に進学する息子に読ませたくてそれとなく勧めてみたけど読まないんだろうなあ😭。2023/03/30
kazuさん
38
湯川秀樹先生が、27歳に至るまでの自叙伝として、書かれたとばかり思っていた。しかし、朝日新聞社学芸部の記者であった澤野久雄により代筆されていた。父は京都帝大の地質学の教授であり、また、母は才女で包容力があった。漢学者の祖父とも同居して、京都の家において、恵まれた環境で育った。ノーベル賞受賞の理由である中間子の存在を着想するまでの経緯が、日常と研究生活の両者の情景を織り交ぜ、洗練された文体で綴られている。日本の誇る天才的な科学者は、知的な家庭環境と幅の広い戦前の高等教育により、生み出されのが理解できる。2021/02/05
まると
32
湯川秀樹の自伝。内向的で無口な文学少年が物理学者を志すまでの経緯や家族のことなどを飾らない言葉でつづっています。天才なのだろうけど、それを感じさせない純朴さが文章に表れていて、読み進めるにつれて好感度が高まりました。湯川さんが学生の頃は軍縮時代で、学者の卵は兵隊にとらなかったのでしょう。少し遅かったら研究に没頭できていたかどうか。京都という土地柄も、戦争の影を希薄にさせているように思います。岡潔や西田幾多郎らも登場し、明治・大正に生まれ育った学者たちが既に厳然たる学問の世界を築いていたことが印象的でした。2021/06/30